十八匹目 ページ19
sideうらた
センラが言ったように素直になるのも悪くなかった。
いつもは強がって虚勢を張っては満たされない日々にイラついていた。
一度は破り捨てようとした"あの写真"もテープで補修してまで持ち歩いて"彼女"をずっと捜した。
見つからなくて諦めかけていたその時にAが浮上してきた。
負傷した仲間を逃がす為に俺に抗う彼女にしてやられたが、ふと興味が湧いた。
女相手にやられっぱなしで済ますのは男が廃るから、仕返しするつもりだったのにな。
A「うらたさん、お着替え終わりましたよ」
うらた「ん、ああ。お、綺麗に結べてるじゃん」
A「えへへ、それは良かったです」
A「あ、"昨日の事"は秘密にしてくださいね？」
A「バレたら抗争勃発とか嫌ですから」
うらた「別にバレても問題ねぇだろ。お前をウチで」
うらた「引き取れるか聞けばいいしな」
A「私をオルカにですか！？お断りします！」
A「大して強くないので、きっと後悔しますよ」
「表」の連中に一人で立ち向かったなら弱くない。
彼女は強者揃いの中にいるせいで、気付いていないだけかもしれない。
うらた「…後悔なんざ、その時に考える」
うらた「余計な心配すんな。ほら、ついて来い」
俺はAの手を取って歩き出したが、彼女はずっと黙ったままペンギンのアジトに着いてしまった。
仲間に怒られるのを恐れてるのか、表情が暗い。
うらた「…お前は悪い事をしてない。俺が一緒に」
うらた「いるから大丈夫だ。怖いなら後ろに隠れろ」
うらた「お前を引き留めて"酷い事"をした俺が悪い」
うらた「…ごめんな、一生恨んでくれていいよ」
Aに一生消えない傷を負わせた罪は重いのは分かってるつもりだ。
怪我人相手に少し煽られたからって流れであんな真似するんじゃなかった。
彼女が俺の手を握り返してくれると首を横に振った。
A「…恨んだりしませんよ。私もごめんなさい」
A「でも、嫌じゃなかったです。本当なら」
A「乱暴な事をされてもおかしくないのに」
A「うらたさんは優しく、酷い事はしなくて」
A「初めてだったのに怖くなかったです」
A「送って下さってありがとうございました！」
俺の手を離して、ペンギンのアジトに彼女は戻った。
彼女の温もりが少しだけ恋しく感じるのは気のせい。
嫌じゃなかった、怖くなかったと言ってくれただけですごく嬉しいなんて初めて思った。
彼女が愛しい。
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ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2022年8月3日 10時) (
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作者名：やすちん | 作成日時：2021年2月8日 19時
