第五十九夜 ページ10
sideうらた
俺の手当てがひと通り終わったのか、振り向くとAが泣きそうなのを堪えてた。
こうなったのも町の連中が悪いが、Aは悲しんでる顔は見せないように無理して笑う。
初めて出会った日もそうだったけど、Aはいつも一人で我慢をしてる。
誰かに迷惑をかけないように、心配させないように、当然のように自分以外を優先する。
そんな優しいAを壊したくなくて、そっと頭を撫でてから腕を広げる。
こんな事しか出来ないけど、少しでも安心させてあげられるのならいくらでもしてあげたい。
もっと我儘の一つや二つ言ってくれたっていいのに。
Aは結構な勢いで俺の腕の中に飛び込んできた。
たくさん甘えていいよって意味を込めて俺の気持ちを伝える。
A「…ぐすっ大好きです…」
よく耳を澄まさないと聞こえない小さなか細い声。
俺も大好きだよ。
うらた「…ッ！？」
やまだぬき「あ…！」
Aを抱きしめる俺の手が一瞬だけブレたように消えかかって俺とやまだが驚く。
もうすぐここからいなくなる事を意味してる。
やっとAと結ばれたのに、二度と会えなくなる。
いつかこの日が来る事は分かってたはずなのに、こんなに早いだなんて聞いてない。
A「いつも夜は不安で苦手だったんです」
A「そんな時にうらたさんが来てくれました」
A「初対面の時はたくさん怪我をしていて」
A「驚いたんですけど、悪い人じゃないのが」
A「すぐに分かったので安心しました」
名前)「私は幸せで恵まれてますね」
A「うらたさんに出会えて本当に良かったです」
教会で目が覚めた時にAが寂しそうな表情をしていたのを思い出した。
最初はAを騙してからおびき寄せるつもりだったのに優しくもてなしてくれたせいで油断したっけ。
うらた「まぁ、俺もあの日に助けてくれなかったら」
うらた「野垂れ死にしてたろうし、今は感謝してる」
A「あの日はごめんなさい。すぐ出れなくて」
A「坂田様に居留守の約束してたので…」
うらた「いいよ。大事なのは分かる気がするけど」
俺がもし、逆の立場ならそうしてるだろうな。
まぁどこの誰にも触れさせねぇけどな？
うらた「朝になるまでこのままでいさせてほしい」
うらた「今は少しでもAと離れたくないんだ」
A「もちろんいいですよ。私もそうしたいです」
朝を待つ時間は長いようで短いからたくさん話そう。
最後まで。
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作者名：やすちん | 作成日時：2020年5月28日 10時
