第五十七夜 ページ8
雨が止んで、月明かりがうらたさんを照らす。
うらたさんは頭を抱えて少しずつ後退りながら私から距離を置く。
突然逃げるようにと言われても、私は逃げなかった。
ここで逃げたら二度と会えなくなる気がしたから。
うらたさんの冷えきった体に抱きついて離さない。
出会った日と同じようにうらたさんに殺されるなら本望だし、後悔はしない。
うらた「あのなぁ…ってその指、どうした！？」
A「あ、無我夢中で探した時に切っただけです」
うらたさんに言われて気付いたけど、無意識に指を怪我してたらしい。
少し血が出てるが痛みはない。
うらた「その血、もらってもいいか…？」
うらた「喉が渇いて死にそうなんだ。頼む…！」
A「え！？それは大変です！どうぞ！」
うらたさんが私の指を口に含むと止血するまで吸ってくれた。
咄嗟に言ったものの、ちょっと恥ずかしい。
うらた「ん、ご馳走様」
A「もう大丈夫ですか？」
うらた「ああ。助かったよ」
A「本当ですか？お役に立てて良かったです」
ヴァンパイアは少しの血だけで落ち着くなんて知らなかった。
うらたさんは真剣な顔で私を見つめる。
うらた「実はAに言いたい事がある」
うらた「伝えるか迷ったけど、諦められなかった」
うらた「俺はAが好きだ」
うらた「もう傍に居られる時間は短いけど」
うらた「最期まで俺にAを守らせてほしい」
優しく微笑むうらたさんに思わず赤面する。
心臓がすごく高鳴ってうるさい。
私も伝えなきゃ、ずっと言いたかった事を。
A「私もうらたさんの事が好きです」
A「強くて、優しくて、カッコよくて」
A「私の中で誰よりも大事な方になってました」
A「不束者ですが、よろしくお願いします…！」
本当は言いたい事がたくさんあったのに、緊張して飛んでしまったけど声が震える。
急に腕を引かれてうらたさんの腕の中へ。
うらた「俺の方こそ、よろしくな」
A「はい。少しだけこのままでいいですか？」
うらた「いいけど、どうした？」
A「顔を見られたくなくて…恥ずかしいので」
少し離れようとしても出来ず顔を上に向けられる。
うらた「ちょっと見せて？可愛い顔してんじゃん」
A「見ないでくださいよ！////」
うらた「俺しか見てないから大丈夫(ﾁｭｯ」
A「んっ！？////」
うらたさんと目が合った瞬間に唇が重なる。
今までのキスよりも長くて幸せを感じた。
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作者名：やすちん | 作成日時：2020年5月28日 10時
