第五十五夜 ページ6
sideうらた
雨の中、ゆっくりと誰かが近づいて来る。
もしかして町の連中が追いかけて来たのか？
まぁ、もうどうでもいいけど。
A「見つけましたよ、うらたさん」
うらた「…A…？」
Aは優しく微笑み、俺を傘の中に入れてくれた。
何でここに来た？
ああ、そうか。俺、Aに祓われるのか。
A「酷い怪我してますし、教会に行きましょう」
うらた「いや、いい」
A「でも、このままじゃ…」
うらた「いいって言ってんだろ！！」
俺の大声にビビったのか、Aは黙る。
やべ、キツく言い過ぎた。
うらた「…俺に何か用かよ」
A「町の人達がうらたさんを追い出したから」
A「それが気になって探してたんです」
うらた「本当は俺の事を祓いに来たんだろ？」
A「うらたさん…？」
うらた「嘘つくなよ！！俺が目障りなんだろ！？」
うらた「俺は化け物でお前ら人間とは違う！！」
うらた「もう、どこかに行けよ！！」
違う、そうじゃない。俺はそんな事が言いたいんじゃないのに。
Aが来てくれたことが嬉しかったのに、一瞬だけ町の連中が浮かんで、もしかしたらそうなんじゃないかって思ってしまった。
俺はAに酷い事を言った挙句、傷つけた。
叶わない恋だと知ってるから。
A「私は今までうらたさんの事を一度も」
A「化け物とか目障りだなんて思ってません」
A「どれだけ町の人達に祓うように言われても」
A「何度でも絶対に抵抗するつもりです」
A「信じてください」
真剣な顔でAは俺を見つめる。
うらた「何でAは俺の事を怖がらないの？」
うらた「俺は血を吸うヴァンパイアなのに」
A「全然怖くないですよ。優しい人ですもん」
A「何度もすぐ駆け付けて助けてくれました」
A「もし、そうじゃなくて悪い化け物なら」
A「私はとっくに死んでますよ」
うらた「そっか…ごめん。勝手な事言い過ぎた」
A「いいえ。あんな状況なら無理もないです」
うらた「ありがとう。実は俺は…ッ！」
雨が止んで晴れたのか、月明かりが俺を照らす。
マズい、収まってた禁断症状が出始めた。
うらた「A、俺からすぐ逃げろ…！」
A「どうしたんですか！？」
うらた「このままだとAの血を吸ってしまう」
うらた「そんな事したくねぇんだ。だから…！」
A「それだけは聞けません！！」
初めてAに抱きしめられた。
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作者名：やすちん | 作成日時：2020年5月28日 10時
