第八十四夜 ページ35
sideうらた
うらた「何で俺達の仲を認めないんだよ？」
坂田「言ったやろ？"俺はまだ諦めてない"って」
うらた「お前な、ここまで儀式の用意しといて」
うらた「言ってる事とやってる事が矛盾してんぞ」
坂田「分かってるわ！！そんなの！！」
出会った日と同じ目付きで俺を見つめる坂田。
Aへの想いは本物で、一番長く傍にいたから俺という邪魔が入ったのが気に入らないんだろう。
もし、立場が逆ならそう思える。
それでも実際にAが想いを寄せたのは俺であって坂田ではない。
うらた「後見人だろうとお前にはAを譲れない」
うらた「何があっても一番近くでAを守りたい」
うらた「邪魔するなら受けて立つ」
俺がいなかった日々はずっと坂田やluzがいたはず。
どれだけ寂しかったんだろう。
どれだけ無理して笑ってたんだろう。
どれだけ一人で泣いてたんだろう。
その場にいられなかった事がすごく悔しい。
許してほしいだなんて微塵も思っていない。
こんな俺でもAは好きだと言ってくれた。
たくさん傷つけて泣かせてもAの隣は決して誰にも渡したりしない。
坂田「…そっちがその気なら俺も本気出すわ」
坂田「あの日の決着はまだやったよな？」
うらた「Aがいたからな。引き分けだろ」
坂田「今はおらんから逆に好都合やな」
坂田「俺が勝てたら、Aの記憶から」
坂田「"うらさんと過ごした時間だけ"を消す」
luz「ちょ、さかたん…！！」
おい、待てよ…！？
今、坂田は記憶を消すとか言ったか？
もしかしてAの記憶が曖昧なのって…！？
うらた「昔のAの記憶を消したのはお前か？」
坂田「ああ。孤児を引き取る時にそれまでの記憶を」
坂田「消す事が条件や。聖職者のルールやからな」
三年前の事もまふまふの事もあまり覚えていないのもこれで納得が出来る。
坂田「Aを拾ったあの日、一人で泣いてたんよ」
坂田「理由は聞かなかったけど、記憶を消せば」
坂田「笑ってくれると思ったから消した」
坂田「今も記憶を消した事が正解かも分からんねん」
坂田「一緒に過ごすうちに俺がAを幸せしたい」
坂田「あの笑顔の為なら何でも頑張れるって」
坂田「この身を捧げてもいいって俺はそう決めてた」
そうだったのか。
坂田もAの為に一人で努力して、魔族を倒し続けて来たんだ。
すごいな、坂田は。
それに比べて俺は今まで自分の為だけで、誰かの事を思った事はなかったんだ。
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作者名：やすちん | 作成日時：2020年5月28日 10時
