第七十六夜 ページ27
sideうらた
そもそも聖水は魔族を退治するのに使用したり、聖職者が儀礼称号を得る為に使用するものだ。
儀式とはいえ、自分がそれに身を投じるとは以前の俺では考えられないだろう。
A「すみません、お待たせしました」
隣の部屋で着替えが済んだAを見て俺たちは息を飲んだ。
白を基調にしたローブのような沐浴着にフードを被っていても可愛らしさが隠せていない。
うらた「か、可愛い…！」
坂田「めっちゃ似合ってるやん…！」
センラ「天使っているんやなぁ…！」
luz「本部に感謝しないと…！」
俺も同じ物を用意されていて、Aとはお揃い。
普段ならこんな格好はしないけどな。
A「わぁ、うらたさんよくお似合いです！」
A「普段黒い服装なので新鮮ですね」
うらた「そ、そう？ありがと」
改めて褒められるとちょっと照れるな。
ありがとう、本部の人。
坂田「さて、儀式を始めるで」
luz「これを見ながらでいいから詠唱してね」
A「分かりました。ありがとうございます」
手渡された詠唱は思ってたよりも長い。
やべぇ、見てるだけで頭が痛い。
うらた「なあ、略式とかないのかよ？」
A「儀式では略式だと効果が出ないんです」
A「では、私が先に読みますのでうらたさんは」
A「後に続いて唱和して頂けますか？」
うらた「分かった。よし、行くぞ」
A「はい！」
俺とAが同時にゆっくりと聖水に足を浸ける。
浸かった身体が焼けるように熱くなった。
うらた「ッ！？かっはっ…！！」
A「うらたさん！？」
うらた「…大丈夫、だ。心配、しなくて、いい」
A「でも、一旦出た方が…！！」
必死に訴えるAの言葉に俺は首を横に振る。
これをクリアしなければ次に進めない。
うらた「3時間、浸からないと、意味、ないだろ」
うらた「俺達なら、必ず、出来る。信じろ」
A「そう、ですね。きっと乗り越えられます」
A「それでは、始めます」
俺の手を取って詠唱をしてくれるAの手を強く握り返す。
2人で頑張るって決めたんだ。
身体が悲鳴を上げていて、少しでも油断をすれば意識が遠のいていく。
俺の身体がふらつく度に詠唱が途切れる。
Aは嫌な顔をせず微笑んでその度に大丈夫ですよって言ってくれる。
何度も何度も詠唱を繰り返す。
どれだけ時間が経っても諦めたりするものか。
体力が限界になっても、お互いこの手は離さずに握り続けた。
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作者名：やすちん | 作成日時：2020年5月28日 10時
