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「先輩はあれでしたよね、めっちゃ怖かったです」
初めて先輩を見た時を思い出し、眉間に皺がよるのがわかる。
ゾム「偏見で俺のこと見過ぎやから。俺はいたって優しいですう」
少し長めの髪の毛の所為で、見ずらい目や、殺気をどことなく感じさせる笑顔は、絶対この人の下に付きたくないと、私に感じさせるには十分だった。
「まあ、今ではいい先輩に恵まれたって思いますけどね」
それを聞いて、固まる先輩。
ゾム「雨宮…。変なもんでも食ったんか…？」
「先輩のそういうとこ、彼女出来ない理由ですよ」
は、えっ、酷ない…？という先輩のつぶやきをながしつつ、当時を思い出す。
教育係だと、本人の口から聞かせられた時、寿命が縮んだと感じたのは今でも鮮明に思い出せる。
そんな私の心配をよそに、様々なことを教える先輩の説明は、丁寧で分かり易く、適切だった。
そのギャップについ、
『思ってたんと違う…』
と、こぼした私に先輩が驚き、吹き出したのは言うまでもない。
その所為で、先輩と気兼ねなく話せるようになるまでに、そう時間はかからなかった。
ゾム「雨宮は俺をよう笑わすよな。ほんま、飽きへんわあ」
と言って、微笑む先輩。
ほら、そういうところだ。
また、胸が苦しくなる。
「…食害、しに行かなくていいんですか？」
思ってもいないことを口に出す。
先輩がここから離れてくれたら、この胸の騒々しさも離れてくれるような気がしたから。
ゾム「今日はええわ。雨宮と話しとる」
優し気に私を見つめる目も、壊れ物を扱うように私の頭を撫でる手も。
見て見ぬ振りできなくなる。
貴方に想いを伝えようとして、思い留まったのはいつだったか。
好きだと自覚してしまったのはいつだったか。
そんなのも思い出せないくらい、好きだけど、何も言わずにそばにいるくらい、許してください。
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作者名：泡沫羊 | 作成日時：2019年9月29日 0時
