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桜魔皇国26日目【朝】 ページ46

昨日はあれから、語れるようなことは何も無かった。
ただ話して、騒いで、疲れて、寝て。
本当にそれだけだった。
しばらくはそんな日々だろう。
外に出ないとそんなものだろう。

それにここに参拝客が来る方が珍しい。
人と関わることも無い。
数週間に1度、官吏の人が黒闇天と話に来るくらいだろう。
私はただ、桜を眺めて、ご飯を食べて、歌って学んで、そしてまた寝るだけの日々を過ごすだろう。

今もこうして、景色を見ているだけだ。
何か悩みがある訳でもない。
かと言ってつまらないという訳でもない。
ただ、同じ日々を飽きずに繰り返しているから、語る事はほぼ同じなのだ。

手持ち無沙汰で、鞘を握った。
そういえば、しばらく刀を抜いていないな。
斬る相手がいなければ、刀を抜く理由すら無くなっていた。
しかし、刀を身につけていないと落ち着かなかった。
姫様の形見と言っても過言ではなかった。
それ故に肌身離さず身につけていた。

「…あぁ、そうだ」
私は景さんに与える加護を思い付いた。
出来るかどうかは分からないが、まぁ出来るだろうと思った。
「最後に手入れをするか」
私は刀を抜いて、磨き始めた。

本当に汚れや欠けている部分は一切ないから、拭くだけで終わってしまった。
それをもう一度鞘にしまって、右手に持った。
「よし、やってみよう」
物は試しと、私は刀に術をかけた。

「桜月流【神】唯一無二の月光」
刀は、眩い光を放つ。
どんな光よりも明るく、名の通り唯一無二の光を放つ。
朝でこんなにも明るいなら、夜にやっていたらそれはもう眩しいだろう。

「上手く…かかってる。良かった、下準備は出来たな」
この術の効果は、その人だけが持つ強さを、より引き出すものだった。
本来は地位の高い月の民が、自分自身にかける術だ。
刀にかけた理由は、勿論ある。
この刀の強みは、どんなに使っても折れにくく、欠けにくく、そして汚れにくい。

つまりは、これを心の中に加護として入れると、誰にどう批判されようとも、挫けることなく、折れることも無く、自分を抑えてしまうこともない。
「託そう、この心を景さんに」
私は光を放つ刀を抱きしめて、最後に呟いた。

「ありがとう…私を支えてくれて」

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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時

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