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桜魔皇国23日目【午前】 ページ36

「司書、何か?」
「あ、あの子です」
「あれ、君は」
「すまない司書、善意なのだろうが余計な世話だ。私は一人でも問題ない」
私は出来るだけ、不快な態度をとった。
桜魔皇国に来る前の私を思い出して振舞った。

「でも、この人は」
「どんな人だろうと関係ない。一人で良い」
私は冷たい目を2人に向けた。
あの時とは打って変わって、今は心がすごく痛かった。
本当は是非教えて欲しいが、関わりを深く持ってはいけない。

「すまない、今日はもう良い。もう帰る」
「待って!」
晴さんが腕を掴む。
私はそれを見向きもせずに振り払った。
「待たない、触るな」
私は本を返して、図書館から出ていった。

私は街中を、涙を我慢しながら歩いた。
申し訳ない気持ちでたくさんだった。
人気が全くない路地裏に入り、陰でうずくまる。
我慢していた涙を、溢れんばかりに流した。
「晴さん…申し訳ない…」

心が本当に辛かった。
関われないというのは、本当に苦しかった。
「…あの子に、嬉しい時に涙を流せと言ったばかりなのに」
別れの形が違うだけで、こんなにも辛いものになるのか。
二度と会えない別れと、会えるのに縁を持ってはいけない別れ。
しかも相手は恩人だ。
流石にくるものがあった。

「怒っているだろうな…」
しかし謝る事もできない。
そう、さっきの本で学んだ。
「私は、イレギュラーなんだ…関与してはいけないのに…」
やはり神社から出ない方が良かった。
こうならずに済んだのに。

「分かっていたのに…」
「あ!見つけた!」
と、頭上から声がした。
上を向くと、心配そうな顔で見つめる晴さんがいた。
何故ここの場所が分かったのだろう。
「白い鳩についてきたら君がいたんだけど…大丈夫?」

「白い鳩…?」
すると、足元にその鳩がいた。
間違いなかった、吉祥天の鳩だった。
「吉祥天…?どうして…?」
「魎、頑張ったね」
「うわ?!鳩が喋った?!」

「心が強くなったね、魎。晴くんにあんな態度取るなんて」
「見てたのか?」
「まぁね、少し心配でね」
「すまない、吉祥天…気を付けてはいたのだが…」
「ううん、大丈夫。もう大丈夫だよ」

「それって?」
「少しくらいの縁なら、運命変わらないって黒闇天が」
「え?」
「死ぬほど疲れるからやりたくないって言ってたんだけど、特別に運命の糸すっごーい強くしてくれたの!今神社で死んだように寝てるよ」
「…そう、なのか?」
「そ!だからもう大丈夫!」

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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時

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