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桜魔皇国23日目【朝】 ページ35

今日も予定通り、図書館に向かった。
昨日の司書に預かってもらった本を借りて、昨日と同じ席で言葉を学んでいた。
呼んでて気付いたことがあるとすれば、片仮名で表記される言葉を『外来語』と呼ぶ事だった。

英語が元になって、それを表記する時に片仮名を使うそうな。
なので昨日司書が言っていた『カード』もその類だ。
ここまで分かってきた自分に感心した。
後は物とその名前を覚えるだけだ。
読んでいるうちに、気になる単語を見つけた。

「バーチャル…」
バーチャルとは、英語表記でvirtualと書いていた。
仮想世界という意味だった。
「…分かっている、ここは現実では無く仮想世界な事くらい」
ここに住む人々からすれば、ここは間違いなく現実だ。

でも、ここは誰かの仮想世界に過ぎない。
現世と呼ばれている場所が本来の現実だ。
もしかしたら、その現世すらも仮想世界なのかもしれない。
いつこの世界が、突然消滅するかも分からない。
この世界を語る者が誰一人としていなくなれば、跡形もなく消えてしまうだろう。

「…あぁ、それはないか」
私がいるではないか。
黒闇天も吉祥天もいるではないか。
私たちの生まれは、現実世界なのだから。
ここがバーチャルだと気づいている存在ではないか。

仮に語り継ぐ人が現実世界からいなくなっても、私たちが語ればいい。
それが物語の在り方なのだろう。
それが、バーチャルが生まれた経緯だろう。
「面白いな、この世は」

ふと、晴さんの気配がした。
「今日も?…頻繁にここに来るのか?元々」
晴さんが2階に来るのを感じて、私は本を持って奥の棚の陰に隠れた。
晴さんは、私の座っていた辺りの席をキョロキョロと見回していた。
「何を探して…」

すると、後から司書も来た。
司書と晴さんの会話が聞こえて、耳をすました。
「あら?あの子ここにいたはずなのに…」
「今、席外してるみたいですね」
「でも本もないわね…どこに行ったのかな」
「外来語の辞書読んでる子ですよね、そんな人パッと見いないけどなあ」

私はふと、自分の持っている本に目をやった。
それこそ、外来語の辞書だった。
「私の事を…?何故…」
「甲斐田さんならあの子の先生になれると思ってたんですけどね〜」
その言葉を聞いて、余計な事を思ってしまった。

善意なのは分かっている、重々承知だった。
ただ、晴さんだけはと思った。
「…しょうがないか」
私は腹を決めて、本棚の陰から出てきた。

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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時

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