1ヶ月桜魔皇国を旅した話三巻 (ページ28)

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桜魔皇国21日目【朝】ページ28

私は、ゆっくりと目を開けた。
そこは、神社の社の中だった。
私はそこに突っ立っていた。
「黒闇天？吉祥天？」
辺りを見回すが、見当たらなかった。

外に出て、屋根の上を見る。
そこには、仲良く座る黒闇天と吉祥天がいた。
「黒闇天、吉祥天！」
「あぁ、旅人。目が覚めたか…いや、もう旅人ではないな」
「魎も見る？あるべき姿のこの国を」

私は隣に座り、鳩の視界を共有してもらった。
その景色は、素晴らしいものだった。
桜の花びらが舞っていて、人々は笑いあっていた。
魔の気配もほとんど無くなっていた。
「なんて…明るい街なんだ」
「ね？でしょでしょ！」

ふと、スマホを触っている人々を見つけた。
それを見て、私は一度視界を元に戻して鞄からスマホを出した。
電話の欄には、誰の名前も入っていなかった。
晴さんと、景さんと、藤士郎さんの名前が前まではあった。
本当に運命が元に戻ったのだろう。

「もう、話せないんだな…」
「大丈夫だよ、声は聞けるから」
と吉祥天は言った。
「お姫様に教えてもらったんだ〜！このアプリ！」
吉祥天は、画面の赤と白のものを指した。

「これで3人の事見れるんだって！お姫様はずっとそれで見てたらしいよ」
「そうなのか…！」
「使い方は後々教えるよ、あたしも教えてもらったからね」
「姉君、その前に」
「あぁ、そっか」
「なんだ？」

「魎、一回桜魔皇国歩いてきな。行きたい所もあるでしょ？」
「あぁ、でも…」
「大丈夫だよあたし達は。あでも、晴くん達見つけても、声掛けちゃダメだよ。あと『祓魔師の魎』もいなかった事になってるから、よろしくね」
「分かった。行ってくる」

桜魔皇国の街中を歩く。
なんと華やかで賑やかな事だろう。
人と神と魔、恐らく均衡を保っているのだろう。
「これが、本当の…」
美しさに感動していると、ふと瑠璃さんを思い出した。

「墓参り…行ってなかったな」
墓の場所は分かるので、私は花屋で桜の花を買って行く事にした。
私はそうして、墓場に向かった。
祓魔師達だけの墓場があり、瑠璃さんの墓もそこにある。
それは割と近場にあって、あっさりとたどり着いた。

桶と尺を借りて、水を汲んで墓場に向かった。
瑠璃さんの墓場の前に来ると、供え物が沢山置いてあった。
お菓子や茶が置いてあって、私も持ってくれば良かったと思った。
「瑠璃さん、遅くなった。私の事覚えているだろうか」
そう言いながら、私は墓石に水をかけた。