桜魔皇国19日目【夕方】 ページ21
3人は、壁を殴り続けている魎の前に着いた。
ただひたすらに、怒りだけを露わにして殴り続けている姿を見て、3人は息を飲んだ。
「めちゃくちゃ怒ってんじゃん…どうするよ」
「…あれ?でも刀使ってないね」
「あ、ほんとだ。地面に落ちてる、というか埋まってるけど…」
「もしもーし、聞こえるかな3人とも」
と案内してくれた鳩が喋りだした。
吉祥天だった。
「黒闇天が術かけてくれてね、今刀使えない状態なんだ」
「術?封印的なか?」
「違うよー、あの刀今頭おかしいくらい重くなってるの」
「魎でも持てない重さか…」
「黒闇天曰く、大体4tくらいだってさ」
「んなアホな」
「どれくらいで持てなくなるか分からないから、過度に術をかけたんだってさ」
「だから地面にめり込んでるのね…」
「雑談はここまで」
真剣な声色になる吉祥天に、3人はすぐに切り替えをした。
「奴が晴くんの言う魔なら…恐らく今は攻撃手段が無い。唯一あるとしたら、あの腰に刺してる鞘だけど…あれも持って殴りかかって来たら術を使って使えなくする」
「そこで俺らで攻撃すればいいんだな?」
「そういうこと、壁壊すよ。準備は良い?」
そう言うと、吉祥天は術を解いて壁を壊した。
それとほぼ同時に、景は刀を抜いて走った。
それを見て、魔に取り憑かれた魎は咄嗟に鞘を取って殴りかかった。
「愚か者が!」
吉祥天は鳩経由で壁の術を必要最低限の大きさで張った。
小さな壁と鞘がぶつかった瞬間に、黒闇天は術をかけた。
またドスンと鞘が落ちて、魎は目を丸くした。
「オラァ!」
と景は刀を振り下ろした。
魎はそれを咄嗟に避けた。
それを見ていた黒闇天は呟いた。
「…やはり駄目だな、景。躊躇していて振る速度が遅い」
魔も恐らくそれに気付いている。
景が無理なら他2人も無理だろう。
「長尾景、聞いてるか?」
「あ?なんだ?」
「無理して刀を使わなくていい、殴れ。殴ってもアイツなら百死なない」
「…そうするわ」
そう言って景は刀をしまい、魎もとい魔に殴りかかった。
魔は攻撃を受け止めずに、ただひたすらに避けた。
本当に触れることを嫌っているように見えた。
晴と藤士郎は術で逃げ場を減らして、攻撃が当たりやすいように援護をした。
そしてとうとう、拳が一発当たった。
初めてダメージを貰い、しかもそれが直接的な攻撃だった魔は衝撃を受けた。
たった一発もらっただけで、山の中に姿を消してしまった。
本当に嫌いなようだった。
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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時