桜魔皇国18日目【夜】 ページ15
弦月藤士郎、甲斐田晴、長尾景は北東の山奥に来た。
微かに感じた気配だけを頼りに探索をする。
「景、そっちなんかあった?」
「いーや、何にも。藤士郎は?」
「こっちも特には…ここら辺にいるはずなのにな」
「仕方ねぇ、もう少し進むか」
「あ!景、藤士郎!あそこ開けてる。あそこでもう一度術使って見ない?」
「ありだな、よし行くか」
警戒しながら、3人は開けた場所に出た。
辺りを見回しながら、気配を集中させた。
すると景は、すぐ近くに他の魔と比べ物にならないほど強い気配を感じ取った。
上だった。
「お前ら!上だ!」
3人は上を向くと、月明かりを背後に、刀を振りかぶる影が迫って来ていた。
景は咄嗟に刀を二本抜いて、まっすぐ降りてきた刀を受け止めた。
「…!魎!」
顔のほとんどが黒い何かに覆われて、唯一見える右目は赤く光っていた。
黒い羽衣をまとい、いつも巻いていた帯の上にただ漆黒の喪を結んでいた。
いつも結んでいた黒くて長い髪は解けていた。
受け止めた刀は、禍々しいオーラをまとっていた。
「魎!忘れたのか?!」
魎は、一言も発する事は無かった。
ただ殺意だけを込めて、刀にかける力を強めた。
「景くん!」
藤士郎は魎に術を使った。
魎はそれに気付いて、景から離れて術を避けた。
「魎…本当に…」
「とりあえず、中にいるやつだけを祓魔する」
景は術を魎に向けて唱える。
しかし、魎は微動だにせず、こちらを見つめるだけだった。
「嘘だろ…」
「効いてない…どうしようか」
「甲斐田の時みたいにはいかねぇだろうしな…」
「まぁ…否定出来ないなぁ…」
そうこうしているうちに、魎はこちらに近づいてくる。
景に向かって刀を振りまくる。
景はそれを必死に受け止めた。
刀と刀がぶつかる音が、北東の山奥に響き渡る。
晴と藤士郎は援護をするも、魎にさらっと躱されてしまう。
「おいなんだよこの強さはよぉ!いくらなんでも強すぎだろ!」
「景くんと戦いながら術を全部避けるなんて…拘束すら出来ないんだけど!」
「チートだろこんなの!こんな強い憑依型の魔なんていたかなぁ…?」
「どうする?一旦引くか?」
「でも街の方まで来ちゃうかもよ?!」
「せめて少しくらい体力削りたいけど…!」
魎の攻撃は止まらなかった。
ただ3人の体力だけが減っていくだけだった。
今は魎に勝てないと、3人は悟っていた。
「ダメだ!藤士郎!」
「分かった!」
藤士郎は札を取り出して、術を唱える。
すると、3人はパッと消えてしまった。
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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時