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桜魔皇国18日目【朝】 ページ12

朝日が差し込む研究室で、今日も今日とて晴は本を読んでいた。
今日のご飯は何にしようかなど、呑気に考えていた。
すると、背後の窓からコンコンとノックをする音がした。
「なんだぁ?」
と後ろを振り向くと、白い鳩がくちばしで窓をつついていた。
何やら相当急いでいるように見えた。

慌てて窓を開ける。
鳩はパタパタと飛んで、机の上に止まる。
「ど、どうしたの?」
と鳩に問うと、鳩が高い声で喋りだした。
「至急!至急!吉祥天様が呼んでいる!急げ!至急!」
「え?え?え?え?」
「至急!万全の準備をして行け!至急!」

「ちょ、ちょっと待って!状況がわからんて!」
「…あ、あー!聞こえるー?晴くんー!」
と突然、鳩の声が吉祥天の声になった。
「吉祥天さん?」
「あ良かった!聞こえたね!」
「あの、これは一体?」

「鳩ちゃんの言う通り、本当に至急よ。魎が魔に取り憑かれた。現在行方不明で、どのくらい取り憑かれたかも分からない。連絡をくれたのが取り憑かれた直後のっぽくて、まだ自我がある時のものだったの。今はもう分からないわ、小狐の魔が手紙持ってきてくれてね…」

「…なるほど、分かりました。すぐ行きます」
「ありがとう、よろしくね」
そう言うと、鳩はまた窓から飛び立って行った。

その直後、景の元にも鳩が到着した。
「どうしたんだ?おめー」
「至急!至急!吉祥天様がお呼びだ!至急!」
「鳩が喋った…」
「はいはーい、聞こえるかな〜景くん」
「その声…本当に吉祥天か?」

「吉祥天だよ〜。景くん、重めの任務以上の準備をして神社に来て欲しいの。来れる?」
「…分かった、すぐ行く」
「具体的には、神社で話すよ。よろしくね」
「あいよぉ」

2人に連絡し終わった吉祥天は、空を見上げた。
「…お姫様、大丈夫、任せといてね」
吉祥天は、転生したかぐや姫と話した事を思い出した。

かぐや姫は、この未来の事を悔しがっていた。
初めは、この運命も書き換えようとしていた。
しかしそれは出来なかった、力が足りなかった。
3人の運命を元に戻すことが限界だったのだ。

桜魔皇国の物語の主役である3人を優先的に直すと、かぐや姫にとっては苦渋の決断をした。
ずっと慕ってくれて、ずっと守ってくれた魎を救えない事を強く嘆いた。
かぐや姫は、魎を信じることしか出来なかった。

「…魎」
吉祥天は両頬をパチンと叩いて気合いを入れた。

「ぜっっったいに!助けるからね!!」

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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時

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