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桜魔皇国16日目【??】2 ページ1

「黒闇天は初めから桜魔皇国にいたの。なのに吉祥天はいなかった。だから私は物語を追加して、吉祥天が桜魔皇国に来るように促した。そして吉祥天の物語を新しく綴って、私と関わりが出来るようにした。で、吉祥天には沢山頑張ってもらったの」

「そうだったですか…それが、僅かに残っていた力を使ってという事ですか?」
「そういうこと、月詠のお力を少しね」
「さすがです姫様…あのとろこで、藤士郎さんは」
虚ろな目をしている、短い髪の藤士郎さんを見る。
姫様は声色を一切変えずに言った。

「…未来の弦月藤士郎には、孤独だけが待ってる。二百年後の弦月藤士郎は耐えられなくて、友を忘れる事が怖くて、今の弦月藤士郎とこっそりと入れ替わった。それも、あの物語を変えていた者が誰も気付かないように物語を変えていた」
「どうしてそのようなこと」

「真相は分からないわ…けど、そのせいで今の弦月藤士郎が現世に来ることは無くなってしまったから、現世から存在が消えたと思っているわ。そして同じ日に現世に来た2人も、弦月藤士郎が来ないおかげで2人も来なくなったの…」
「それで存在が消えたのですね。景さんも物語が変わっていたし…もしかして晴さんの物語も変わっていますか?」

「もちろん。だけど大丈夫、甲斐田晴の物語も直すから…あなたに期待をしてもいいかしら」
「はい、お任せください」
「甲斐田晴の物語を直したら、後は思うがままに生きなさい。あぁでも…」
「でも?」

「物語が完全に直ったら、魎、吉祥天、黒闇天に関連するする全ての記憶を、彼らの中から消さなくてはなりません」
「本来、私たちはいないからですか」
「話が早くて助かるわ。その通りよ…大丈夫?」
「正直辛いですが…私が覚えています。彼らは忘れても、思い出は全て私が覚えています。なので大丈夫です」

「良かった、ありがとうございます。魎」
「いえ、こちらこそ…」
「本当に、強くなりましたね」
「姫様と…それから周りの方々のおかけでございます。ここに来て、随分と私は変われました。知らなかった己も知れました」

「それは良かったわ。私はもう限界が来ました、後のことは頼みましたよ、魎」
「はい!…ありがとうございました、姫様!」
「…幸せにね、魎」
そう言って、姫様は静かに消えていった。
私は我慢していた涙を、ボロボロと流した。

「…姫様、私は幸せです。姫様に拾われたことが一番の幸せの始まりです…本当にありがとうございました…!」

桜魔皇国16日目【午後】→



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作者名:神里 | 作成日時:2022年3月23日 8時

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