二十一話【いちばん】 ページ22
時「………。」
霞柱である時透無一郎は、光邸に来ていた。
戸の前を右に左にうろうろしている。
時「(…阿光さんはいるかな…。いたとしても…急に来てしまったから追い返されるかも…。いや、それでも…。)」
時透は覚悟を決め、戸を叩こうとする。すると、
「…おや、時透くん。」
丁度任務から帰ってきた阿光が、時透の真後ろにいた。
時「!あ、阿光さん…!」
「今日はどうしました?私に何か用事でも?」
時「えっと…あの…その…僕…。」
驚きでたじろく時透。
いつもはどこかやたらと大人びている時透だが、どうも阿光の前だと年相応の反応をしてしまうらしい。
「とりあえずお入りください。話は中でしましょう。」
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「伊之助、伊之助、いますか?」
しん、と静まり返っている屋敷。
「伊之助は任務でしょうか…。お茶を入れますので、お座り下さい。」
時「あ、ううん、そんな長居するつもりじゃないんです…。返したいものがあって…。」
阿光と時透は向かい合うように座る。
「それで、返したいものとは?」
時透は自分の胸元から一枚の写真を取り出す。
時「前にお屋敷へ来た時、たまたま見つけて…。僕、つい持って帰ってしまったんです。ごめんなさい。」
「これは…。」
阿光の数年前の写真だった。今の自分とは全く違う自分がそこには写っていた。
時「今になってどうしてって思うかもしれないけど…これは阿光さんの大事なものだって思ったから…。本当にごめんなさい。」
阿光は受け取った写真を撫でる。
「ありがとうございます、わざわざ。」
「これは、私が十四歳のときの…一番楽しかったときの写真なんです。」
「今の時透くんと同じ年齢ですね。」
時「楽しかったとき…?いちばん…?」
こくり、と頷く阿光。
「この写真は私の敬愛する師範が撮ってくださったものなのです。」
「今は亡き師範が……。」
阿光は少し思い出に浸ると、その写真を大事そうにしまう。
と、阿光が少し悲しそうな顔をしていたのが、時透には見えていた。
時「…阿光さん。」
「はい。」
時「僕、阿光さんに僕と一緒にいる時間が楽しいって、いちばん幸せだって思わせたいんだ。」
時透の瞳がガラス玉のようにキラリと光る。
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おむらいす星人(プロフ) - 雪音さん» コメントありがとうございます!これからも応援よろしくお願いします! (2019年12月12日 20時) (レス) id: f5ed810082 (このIDを非表示/違反報告)
雪音 - 夢主ちゃん天然だけどカッコイイ〜!そして可愛い!これからも更新頑張ってください (2019年12月12日 20時) (レス) id: a35ce04668 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいす星人(プロフ) - カナデさん» コメントありがとうございます!夢主の魅力が伝わって嬉しいです!これからも応援よろしくお願いします! (2019年11月25日 20時) (レス) id: f5ed810082 (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - 堅苦しく礼儀に厳しい夢主ちゃんがちょっと天然でずれてるところが愛らしい笑。宇随さんの「そいつも思春期なんだよ」は思わず吹き出しちゃいました!これからも応援してます。更新頑張ってください!! (2019年11月25日 1時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おむらいす星人 | 作成日時:2019年11月16日 23時