戀

従順な犬 ページ2

小学生の頃、家庭科で裁縫を習っている時に同じ班に侑がいたから、彼の小指に赤い糸を結びつけたことがある。

その頃の私は蝶々結びが上手くなくて、縦結びになった羽を見て侑が笑っていた。

赤い糸の端を自分の小指に結ぼうとした時、先生に遊んでいることがバレて怒られてしまって。


結局そのときさえも、私たちの赤い糸は結ばれなかった。



「馬鹿」
「おー」
「大馬鹿野郎、」
「おー」
「ありえへん。ほんま、どこの女やねんわけわからん」
「俺のクラスのララちゃんやって」
「ああ、あの可愛い子」


宮家で治とマリカーをしながら亀の甲羅などの武器を駆使してイライラを発散する。
狙いを定めて緑の甲羅を放つと、ぼぎゃんっと治が操るクッパに突撃した。


私の方が侑を知ってる。侑が喜ぶことはなんだってわかるし、侑の好きなご飯も好きな服のタイプも自信があるプレーもどの試合が1番悔しかったかも、全部、全部。

侑が嫌がることは絶対にしないし、私は、だからこそ側にいる権利が自分にあると思っていたのに。


「侑ってな、おもろいやつが好きやねん」


最下位になった治はさっきからキラーばかりを出して、ほぼ自動でレーンを走り回っていた。


「なにそれ。私はおもんないって？」
「うけるうけへんの面白さちゃうでな。刺激的かどうかや」


きらりと彼の双眼が光った。
2人ともコントローラーを手放したまま。画面はAIの操っていたヨッシーが一位をとって終わっていた。
私たちは、2人揃ってゴールしないままゲームは終わる。



「だってA、絶対侑に反抗せんやん」





つまりは従順な犬、ってか。

リードを持つのは→←カノジョ。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す