戀

言葉の後 ページ13

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今日はもう5度目のデートで、治と過ごす時間が段々と当然になってきた。

今日も彼は私が気になるお店にすぐに気がついて声をかけてくれるし、ご飯の内容も私を優先してくれる。治と過ごす時間は心が穏やかで、心に何の突っかかりもなく笑うことができた。


「甘いもん食べに行こ」
「うん、治の気になるとこ行こ」
「前行きたい言うてたカフェこの近くやしそこにしよ」
「……ええん？」
「ええよ。Aの行きたいところに行きたいから」


侑の優しさや甘さは例えるとしたら苦味を含んだ蜂蜜で。治のそれは、砂糖のようにさらさらとしたものだった。

案内された席について、レモンの香りがするお冷やを口に含む。なんか落ち着くなあ、と思って視線を彼にやると、同じタイミングで目が合った。


「俺ずっと言ってなかったけどな」
「うん」
「今更やけど、Aのこと好きやねん」
「……え、それって」


ふわりと柔い微笑みを浮かべた治は、テーブルの上で無防備だった私の手に自らのそれを重ねたあたたかく言葉を紡ぎ出した。


「恋愛的な意味で」
「わかる、けど。……でも私」
「おー。ええでそんな急がんで。急かす気ないし。Aも色々考えるんしんどいやろ。とりあえずこれからも俺と遊んでや」


な？ と言われてしまって、頷いた。

でも私、の後に続けようとした言葉は自分でもわからない。治は「侑が好き」という言葉だと思ったのかもしれないが、私はその言葉はどうも当てはまらなくて。

かといって何を言おうとしたのかはわからない。
私たちの、いつのまにか絡まっていた糸の先が、不思議とぼんやりと見えた気がした。


「あ、そうや、治」
「ん？」
「侑にとって私って何やと思う？」


大きな目が一瞬見開かれて、ぐ、と重なっていた手が強く握られた。


「それを俺から言うんはなんか、ちゃうと思う」
「……そうやんな。ごめん」

「や、それを聞かれるとは思ってなかったから。そっか、なんでそんなこと考えるようになったん？」
「んー、ララちゃんに幼馴染ってそんな特別なん、て言われてさ。私たちってちょっとずれとんかなと思って」
「ふぅん。なんや、──」



治の口角が上がる。そのあと彼が何かを言ったけれど、私は何も聞き取れなかった。

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