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はじめは、本当に、ただ犯人を見つけたいという純粋な正義心だった。
大好きなお姉さんの記憶を消し、俺たちを怖い目に合わせた男が捕まっていないことに耐えられなかったから。

両親は小学校を上がる前に事故で他界し、「親がいないから」と勝手に色々なレッテルは貼られていった。

恵まれた容姿と体格に感謝して、やっと自分に対して肯定的になれたのは高校に入ってからだったと思う。

同時に俺たちは、高校生になってから、変わってしまった。


「侑、あいつ、見つけたかもしれん」

「ほんまか!」

「おん。明日動いてみる」

「俺もいく、」


ある日唐突にそう言い放った治の目はギラついていて、うちに潜む獣はその時から開眼していたのだと今だとわかる。

連れていかれた路地裏はひっそりとした細々なもので、暗闇の中では静かな冷たさが満ち溢れていて恐怖心をおぼえた。


──コツン、


響いた革靴の音にピクリと反応した俺とは真逆に、治は微動だにしない。
破裂しそうな心臓をおさえ顔を見ようとした時、隣にいた治が音もなく飛び出した。

そして、手に持っていたパッドを振りかざし、





「……治」
「おん」
「このひと、犯人ちゃう、」


声を出すのも忘れて、ひくつく喉奥と震える足のままに妙に冷静な片割れにしがみつく。


「みたいやな」


治の目はいつからか曇り切っていた、瞳の奥底にも熱がない、冷たい目になっていた。
ずっとそばにいたくせに、俺はそれに気づくことができなくて。


「また捜さなあかんな」


ごろり、と、バッドがアスファルトの上を滑った。


人を殺してしまった罪悪感だとか焦りだとか戸惑いだとかは一切ない表情だった。

きっと治にとっての生きる糧みたいなものが犯人を探し出すことで、それが唯一治の心を救うものだったのだと思う。





「ソシオパス、?」

「うん、そうやと思う。俺が一時期おらんくて、帰ってきたと思ったら親がおらんくなって精神的にきてる中、レッテルに苦しめられて」


多分俺も治も、限界などはとうの昔にきていたのだろう。

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ぴーなつ(プロフ) - はるしおさん» ありがとうございます! 展開に重きを置きすぎて他の描写がうまくできていない気がしていたので、そのようにお言葉頂き光栄です……! 更新頑張ります!!!! (2018年9月19日 17時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
はるしお(プロフ) - すごいです。とても。展開や描写やキャラの心情や、もうすごいです。語彙力が追い付かないのが本当に悔やまれます。変な言葉しか出て来なくてすみません。更新楽しみにしております! (2018年9月19日 13時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴーなつ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年9月4日 21時

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