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ぐらりと膝が折れ倒れてしまった彼女を抱き上げる術を持たない俺は、監視カメラのある方向に向かって思い切り叫んだ。


「北さん! あんたが来い!」


そうじゃないと殺す、と言うようにカメラを睨み付けていると、俺の意を汲み取ってくれたのか、北さんが一人で来てくれた。

そして倒れた彼女を抱き上げ、ほっと息を吐く。
どうやら気を失っているだけのようらしい。


「何があったんや」

「……たぶん、ちょっと思い出したんやと思う。俺のこと『侑くん』言うたから」


懐かしい響きだった。
もうずっとずっと昔になるが、明るく優しい笑顔でお姉さんは俺たちのことをそう呼んでくれたのだ。

もう二度と呼ばれないと思っていた。
こんな形で呼ばれることを願っていたわけではない、のに。
ーー嬉しいと、思ってしまったんだ。


「侑、お前も被害者やったな」

「……俺たちは、、全然。特に何かされたわけでもないし。なあ北さん、あんたは、お姉さんの何なん?」


急かすように檻を掴んだ俺を優しい目で見つめると、彼はそっと彼女の頭を撫でた。
それは間違っても上司が部下をいたわるような姿ではない。


「べつに特別な関係でもないで。ただ、警察になろうと思ったきっかけがあの事件やって、かつ、俺もAを守りたいと思っただけや」

「質問に答えて」

「いとこ」

「え?」


檻を通り越し、細い腕が俺の頭を撫でた。
その手のひらのぬくもりは、お姉さんによく似ていた。


「幼馴染の可愛い双子の兄弟、よくAが口にしとった。最近まで忘れとったわ。調べてから思い出した」

「そう、やったんか……。そうか、いとこか、だから、全部」


その時ザザッとノイズ混じりの音が響いた。
瞬間北さんの目が鋭くなる。


ザ、ザーー……


『事件発生、被害者は中年男性、尚近頃起こった殺人事件に類似する模様。現場はーー』

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ぴーなつ(プロフ) - はるしおさん» ありがとうございます! 展開に重きを置きすぎて他の描写がうまくできていない気がしていたので、そのようにお言葉頂き光栄です……! 更新頑張ります!!!! (2018年9月19日 17時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
はるしお(プロフ) - すごいです。とても。展開や描写やキャラの心情や、もうすごいです。語彙力が追い付かないのが本当に悔やまれます。変な言葉しか出て来なくてすみません。更新楽しみにしております! (2018年9月19日 13時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴーなつ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年9月4日 21時

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