2-5 ページ15
祈るように手を握りしめ、電車に揺られる。
一つ一つの駅に停まるローカル線にさえイライラして、普段は絶対にしない貧乏ゆすりをしてしまう。
一分一秒早くシロに会いたかった。
「次は終点のーー」
ずっと俯いていた顔を勢いよく上げた。
この後の駅で降りて、それからバスで、その後は徒歩だ。
バスに乗って、降りて。
運動は嫌いだけど、この時ばかりは走るしかなかった。
小さな鳥居が見えた。それはあのおいなりさんのもの。
大好きな彼がいる場所
「シロ、シロ、出てきて!」
風が黄色がかった葉を揺らした。
ここに来るときはいつも緑だったそれが色づいているのが、感じる風が少し肌寒いのが新鮮だった。
「A」
彼が私の名を呼ぶ。
純白の、絹のように細く艶やかな髪が揺れる。大好きな香りが、私を包み込んだ。
切れ長の目を細めて、優しく笑う。
「よかっ、た……。シロが、視える……」
「ははっ、うん。俺も、嬉しい」
手を伸ばすと触れることができる、私の手に優しく触れてくれる。
そのことが、なんと嬉しいことか。
「寒そうな格好やな。こっちは寒いやろ?」
「うん、でも、走ってきたからあったかいよ」
シロに会いたかった、と言葉をこぼすと、強く抱きしめられた。
それは、苦しいほどに。
「A、お前が持っとる全てを捨てて、俺の嫁になるか?」
30人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴーなつ(プロフ) - 通行人Bさん» こういうときついった繋がっててよかったって思うありがとう! (2017年9月6日 1時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
通行人B(プロフ) - ぴーなつさん» そそ割とコメントしてた!! りえだったんです〜!! 笑 どういたしまして!! (2017年9月3日 21時) (レス) id: 75168181ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - 通行人Bさん» ありがとう〜〜! 通行人Bて、え、結構コメントもらったことあるんじゃ!?笑 里依だったの!笑 コメントありがとね〜〜! (2017年9月1日 14時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
通行人B(プロフ) - 3日に1度のペースで読み返しにきてます里依ですよ!! これほんと好きなんだよね!! コメントするの忘れてた気がするからしときます完結おめでとう!! 笑 (2017年8月30日 20時) (レス) id: 75168181ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - ラシェーヌさん» ありがとう! 悲しいばかりのエンドでも、どこかに美しさや儚さを感じてもらえたのなら!嬉しいです! (2017年8月30日 11時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ