1-0 ページ1
忘れてしまったものは、きっととてつもなく大切だったもの。
心の中で思い出せと私に叫んでいる、そのあったはずの記憶は、今もまだ色づくことなくモヤとして存在していた。
「A」
私の名前を呼んだその声は、まだ耳の中、心の中で反響しているのに。
赤い鳥居に手を伸ばして、そこをくぐっても、彼らには、彼には、会えない。
青々しい葉が風に揺らされ、カサカサと耳に心地いい音を運ぶ。
ギンと強く眩しい太陽の光に目を細め、手をかざした。
大木に寄りかかり、私は何度でも声を張る。
「もういいかい」
その問いに答えるのは木の葉の囁きだけで、「もういいよ」の声は聞こえない。
あの日からずっと、私は鬼のままだ。
あの日? あの日って、どんな日だったっけ。
終わらないかくれんぼは、彼らの優しさだと分
かっている。
それなのに、今そんな優しい彼らのことを私は思い出せないでいる。
「まだあかんの?」
まだあなたたちを見つけては駄目なのか
まだ思い出してはいけないのか
「全部捨てて、俺のお嫁さんになれるか?」
欲しそうに、けれどどこか辛そうに私の手を取った彼を、私はまだ見つけられない鬼のまま、このかくれんぼは終わらない。
30人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴーなつ(プロフ) - 通行人Bさん» こういうときついった繋がっててよかったって思うありがとう! (2017年9月6日 1時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
通行人B(プロフ) - ぴーなつさん» そそ割とコメントしてた!! りえだったんです〜!! 笑 どういたしまして!! (2017年9月3日 21時) (レス) id: 75168181ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - 通行人Bさん» ありがとう〜〜! 通行人Bて、え、結構コメントもらったことあるんじゃ!?笑 里依だったの!笑 コメントありがとね〜〜! (2017年9月1日 14時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
通行人B(プロフ) - 3日に1度のペースで読み返しにきてます里依ですよ!! これほんと好きなんだよね!! コメントするの忘れてた気がするからしときます完結おめでとう!! 笑 (2017年8月30日 20時) (レス) id: 75168181ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - ラシェーヌさん» ありがとう! 悲しいばかりのエンドでも、どこかに美しさや儚さを感じてもらえたのなら!嬉しいです! (2017年8月30日 11時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ