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「あんた、お腹減って動けないの?」
家に帰る近道の、路地裏の片隅で、傷の多い狐が死んだように倒れていた。
それが妖だと分かっていながら声をかけるだなんて、私らしくなかったのは覚えている。
「俺がお前を守ってやる」
「調子にのるなバカ狐」
妖や霊の類に好かれる体質で、よく危険な目にあっていた。
「守る」だなんて言った狐を拾ったのは、ただの気まぐれだった。
野生の、狐の妖。
人間の姿で私を送り迎えして、私の作るご飯を美味しそうに食べる。
かわいくない私の態度も、笑ってさらりと流すのだ。
「いつも定期的に襲ってくるやつがいるよな」
彼と出会ったのも夏
そのときがきたのも夏
その季節は、私に乗って特別なものになった。
「あんなの倒さなくていいから、あんたがそばにいて、ずっと私を守ってよ!」
「そんな悠長なこと言ってられるか」
乱暴で、雑で、けれど、優しい。
驚くほど優しい妖だった。
「目閉じてろ。そんで数かぞえとけ。……そうだな、かくれんぼだ。お前が鬼な」
百数えて、目を開けて、そうしてなんども私は彼を呼んだ。
「もういいかい」
きっと、あいつはまだどこかで隠れている
「まーだだよ」
いつまでもそう言って。
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ぴーなつ(プロフ) - 通行人Bさん» こういうときついった繋がっててよかったって思うありがとう! (2017年9月6日 1時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
通行人B(プロフ) - ぴーなつさん» そそ割とコメントしてた!! りえだったんです〜!! 笑 どういたしまして!! (2017年9月3日 21時) (レス) id: 75168181ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - 通行人Bさん» ありがとう〜〜! 通行人Bて、え、結構コメントもらったことあるんじゃ!?笑 里依だったの!笑 コメントありがとね〜〜! (2017年9月1日 14時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
通行人B(プロフ) - 3日に1度のペースで読み返しにきてます里依ですよ!! これほんと好きなんだよね!! コメントするの忘れてた気がするからしときます完結おめでとう!! 笑 (2017年8月30日 20時) (レス) id: 75168181ed (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつ(プロフ) - ラシェーヌさん» ありがとう! 悲しいばかりのエンドでも、どこかに美しさや儚さを感じてもらえたのなら!嬉しいです! (2017年8月30日 11時) (レス) id: fdda74aed7 (このIDを非表示/違反報告)
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