優しいかくれんぼ【短編集】

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「おばあちゃん、元気にしてた？」

「……うん」


実質おばあちゃんに会ったのはものの数分で、シロといた時間の方が、ずっとずっと長かった。

その時は何も思わずに、ただ彼を感じることに必死だった。
けれど、今更になって湧いてくる、都合のいい罪悪感。


この世に存在する人と、この世のものではないもの。

どちらを優先にするか、なんて、普通の人だと即答で前者を選ぶのだろう。


そんなのわかってる。


「お母さんは、もしもだけど、お父さんと駆け落ちすることになったら、おばあちゃんとかおじいちゃんとか、縁を切ることってできた？」

「変なこと聞かないでよ」

「いや、あの、……聞いてみたくて」


お母さんは浅く笑って息をつくと、私の前に座った。


「若かったし、お母さん頑固だし、たぶん駆け落ちすると思う。この人さえいればいい、新しい家族を作ればいいって、思ってしまうんじゃないかな」


予想外の言葉に、目が丸くなる。
けれどすぐに、「でも」と言葉を続けた。


「絶対死ぬほど後悔する」


言葉は、とても重かった。


「新しい家族って言っても、お母さんの親はおじいちゃんとおばあちゃんしかいない。その人たちを新しく作ればいいなんて、そんなのできないでしょ？」


「みんながみんな、お母さんみたいな考え方じゃない。結局は人それぞれよ。……こんなのでいい？」


シロの存在を、お母さんは知らない。
それなのに、お母さんの目に、優しさとほんの少しの寂しさが見えた気がした。


「うん、ありがとう」

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