かわいいは絶対じゃない【HQ】

顔を見たい ページ36

いつ、どうやって言おう。


それを考えていなかったことを後悔したのは、歩き出してからだ。


校門のところで言えばよかっただとか、近くの公園に行けばよかっただとか思った。


だから、言うなら、別れるときだと決めた。


俺よりずっと華奢な体が頼りなくて、離したくなくて。


いきなり抱きしめるなんて、自分でもよくやったと思う。


すぐにもらえると思っていた返事は中々返ってこなくて、不安になったとき、ぐっと、服をにぎれた。


「わ、私も！私も、英のことが好き…！」


ぱっと顔を上げたAの笑顔と言ったら。


かわいすぎて見ていられなかった。


「英？」


「ちょ、待って。あんまり見ないで」


「見せてよ」


伸ばされた彼女の手を、掴んだ。


そして、ひたりと、自分の頬に当てる。


少しだけ俺より冷たい手のひらだったが、気にならなかった。


「俺の彼女になったらいくらでも見られるよ」


まだ顔は赤いだろうが、それでも余裕ぶって笑ってみせた。


そうすると、みるみる赤くなっていくAの顔。


外灯のある場所でよかった。


Aの顔がよく見える。


「か、かのじょ」


「なるだろ？」


「なるに決まってるでしょ…！」


今度はAが俺に抱きついた。


「英はズルイ」と言って。


けれど、俺からしたらAの方がズルイ。

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