かわいいは絶対じゃない【HQ】

国見英、うなる ページ31

教室を出てさっそうと帰るー…


ことはなく。


誰かが追ってくる可能性も考えずに、壁に手をついてしゃがみこんだ。


「あー…」


何をいうでもなく、うなって


「……あー…クソ」


またうなる。


岩泉さんがタイプだと言って、及川さんも賛同して。


俺の好きな人はこんなに中身もよくて、かわいいんだと言ってやりたくなって。


きっと頭に血が上っていたのだろう。


見せつけるように彼女が好きだと言って、今冷静になって。


とてつもなくらしくないことをしたと自分でも思った。


「明日部活行きづらすぎだろ…」


意味もなくぐしゃぐしゃと髪を乱して、また一息ついて。


それでも、後悔はしていなかった。


逆にすっきりして。


無性に、Aに会いたくなった。


「こっちだったっけ」


聞こえるフルートの音を頼りに、前にあった場所へと向かう。


部活中だしあまり話しかけられないが、姿だけでも見たい。


少しずつ大きくなる音色に心躍らせる。


はやく、あいたい。


綺麗な音色と、凛とした姿勢。


「A」


無意識のうちに名前を呼んでいた。


しまった、と口元を手で覆うが、聞こえてしまったらしく。


「英」


Aが俺の名前を呼んだ。


それだけで。


「…ん」


嬉しくて、にやけてしまう。

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