かわいいは絶対じゃない【HQ】

ぶつかった人 ページ12

日々募る彼への想い。


と、向けられる嫉妬。


「いいなあ、私も同じ中学ならよかったのに」


かわいいという最強の武器を持っているくせに、これ以上何を望むのだ。


絶対に渡さない。


「時間なんて関係ないって！こんなにかわいいせいらのこと嫌いな人いるわけないじゃん！」


周りの友達は、みんなせいらのことが好きだ。


かわいいし、一緒にいるだけで何か華やかに見える。


「でもAは国見くんと仲良いし…」


「お互い意識してないからでしょ！」


お互い意識してない


その言葉が、私の神経を逆なでする。


せいらを勇気づけるためには、私なんかの気持ちはいいってわけ。


せいらを持ち上げる雰囲気は変わらず続いていた。


この得体の知れない気分はなんだろう。


ああ、なんだ、少し吐き気がするだけだ。


「もう国見くんだってせいらのこと好きだって！」


うん、だめだ。


もう、この空気限界。


「私ちょっと先生に呼ばれてて」


「了解〜」


せいらがどこかに行くと言えば、ひっつき虫のようについていくのに。


今はこの方が都合がいいけど。


もちろん先生になんて呼ばれていない。


私は何をするでもなく廊下を歩いていた。


ぼーっとしていたからだろうか、どんっと人にぶつかってしまった。


「すみませんっ」


「あれ？お前、前道で…」


そんな声が聞こえて顔を上げる、と。


「先輩…」



この前道で及川さんの隣にいた人だった。

岩泉さんという人→←帰り道

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す