見習い吸血鬼と先輩ヌナ【JK】 (ページ12)

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【ジョングク】

ヌナは今日も吸血に行った。

館でひとりぼっちは寂しくて、気を紛らわすために掃除を始める。

広い館で部屋がたくさんあるけれど、掃除はあっという間に終わって残りはヌナの部屋だけ。

ゆっくり扉を開けるといつものヌナの部屋。僕の大好きなヌナの匂いに包まれているみたい。

ヌナの部屋で一際目に入るのは、窓辺に置いてある黒い薔薇。月夜に照らされて黒光るその薔薇が咲いているのは見たことない。

ずっと蕾で、咲く予感もしない。

それなのにヌナ毎日この薔薇に水をあげて、大切に育てている。何か思いれあるかのように、大切に。

不思議に思いながらも掃き掃除を続けていると、部屋の奥から風が吹いてきてよく見るとドアがあって、よくヌナの部屋にくるけど気づかなかった。

本当は入っちゃダメな部屋だったのかもしれないけれど、僕は中に入ってしまった。

その部屋は物置みたいにたくさんのものが置いてあって、本や絵画、骨董品など古いものが多い。

部屋を進むと茶色い机が見えて、その机の上に一枚の写真。

その写真には小さな女の子と男性が写っている。

その小さな女の子はぎゅっと男性にくっついていて、男性はにこやかに微笑んでいる。女の子の大きな瞳がどこかヌナに似ているような気がする。

そんな写真は埃かぶっているけれど、大切なものなのだろうと思った。

その写真を置いて部屋を見渡すと、まるで隠されているかのように机の脇に一本の剣を見つけた。

その剣を手に取ると、ちょうど月夜が当たって鮮明に見える。

十字架の剣がどうしてここに。

十字架の剣は吸血鬼を殺せる唯一のもの。この剣で心臓を貫けば吸血鬼は死ぬ。吸血鬼にとっては恐れるものをどうしてヌナが持っているのか。

ドクンと僕の心臓が嫌な音を立てた。

この十字架の剣に、赤黒く錆びれた血がついているから。

ヌナはあまり自分の話をしない。過去に何があったのか、僕を拾うまで何をしていたのか。

ヌナは、何者なのか

正解の見つかるはずのない問いを考えていると、ガチャリと館の扉の開いた音がしてヌナが帰ってきたんだと分かった。

僕はヌナの部屋から出て、自分の部屋に戻った。

掃除道具を例の部屋に忘れてきたまま。

「……………」