エンカウント

. ページ37

ただの友達だと思っていた人から好意を寄せられるって、どんな気持ちなんだろう


案外、アイドルのうみくんには慣れっこな話なのかもしれない


数あるうちの一つならきっと直ぐに忘れてくれる









きっぱり断られてしまえば、諦めもつくはずだ


呆気なく終わらせて一冬の思い出くらいになれば、もっと遠くの存在になった時に幻想だったと忘れるのかもしれない



「私はうみくんの事、ただのゲーム仲間だなんて思ってないよ」


「なにそれ、」


「多分、うみくんがアイドルだって分かる前から
うみくんの事好きだったんだと思う」



ずっと前から、とうに惹かれていたんだ


だからこれ以上側にいるのはつらい


うみくんだって、ファンでもない癖に
好意を持っている人間が同じ部屋に居るのは嫌だろう


最後までうみくんの淹れてくれたお茶は飲めなかった









.









家を出ようと立ち上がる


けれど、体勢を崩してうみくんの元に飛び込んでしまった


別に躓いてなんか無い


うみくんが急に手を引っ張るから


直ぐに離れようとしたけど腰にまわされたうみくんの腕がそれを許さない



「うみくん、離して」


「やだ」


「別に慰めてくれなくても
今までの事は口外しないよ？」



好きな人には幸せになって欲しいんだから
邪魔なんてする訳ないのに


きっとうみくんは優しいからこうやって慰めようとしてるんだろう









「勝手に自己完結すんなよ」



力の強くなった腕は少しだけ苦しい



「うみくん…？」


「Aちゃんの基準で言うなら、俺のも綺麗じゃ無い

多分、俺の方がずっと」


「なにそれ

それじゃあ、うみくんも私の事好きみたいじゃん」



胸に顔を埋めているから
目が合わないのを良い事に軽い気持ちで言った


そんな冗談でも言っていないと心臓が保ちそうになかったから

.→←.