123話 ページ28
「思っていたよりめんどくさくて驚いた」
イレイザーが抑揚をつけずにそんなことを言う。
「お前はその話をすることで、俺が危険な目に合うのを危惧しているわけだろ？
お前は俺がヒーローだとか言っていたが、今お前の目の前に座っているのは、お前の担任だ」
イラついているのを隠す気はないらしく、包帯で見えないコメカミは明らかにピキピキと音を立てているようだった。
─────ほら、やっぱり。あなたはそういう人だ。
『教師だと思われてないから怒ったんですか？ ちゃんと答えてくださいよ』
「質問にはお前も答えてないだろ。あれはなんだ？」
食い下がる気もないらしい。力強い瞳で私を凝視してきて、思わず目を逸らしそうになった。
私は、話さないことでイレイザーを遠ざけようとしている。
イレイザーは、話させることで私を守ろうとしている。
自分を棚に上げてるかもしれないけど、どっちも間違っていないと思う。
でも、イレイザーは正しくても、私は正しくない。
『1つだけ、条件があります』
「はあ……なんだ？」
わざとらしくため息を吐いて聞いてくる。
『私の話を聞いても、今までと違う行動はしないでください。急にヒーローだから、とか言って突っ込んで来るなってことです。したらなんとかして記憶消すんで』
イレイザーが目を見開いたのが見えた。
私が話したくなかった理由は、それが原因でイレイザーの身に危険が及ぶのが嫌だったからだ。
だから、その危険がなくなるなら別に話しても良い。
……というか、嬉しかった。
鋭児郎もそうだけど、今世でここまで私に向き合ってくれる人なんて、あまりいなかったから。
「記憶は消せないだろ。こういう時はトンチンカンだな」
『こういう時はいち早く条件のむでしょ！』
「条件をのむ。これでいいだろ。さっさと話せ」
『なんか偉そうだなさっきから』
今度は私がため息を吐いて、鋭児郎に話した内容を簡潔に説明した。イレイザーの反応は予想通りのものだった。
『あ、体育祭で使ったのは�犖撞朖瓩任后�
「急に軽いな」
そんなことを言いながらも納得したのか、あっさり「帰っていい」と言われた。
ふと目に入った窓外の景色は深いオレンジの夕焼けで、随分粘ったな〜と思いながら席を立つ。
『それじゃあ失礼しまーす』
礼をして部屋を出ようとした時、後ろから「A！」と少し焦ったような声が聞こえた。
「気をつけて帰れよ」
あー、さっそく記憶消してやろうかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 432人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シグマを襲いたい/// - しょしょ！！ショウガクセイ？！わわわわわわたしもデス………いいなあ！ぜひ文才わけ((( (2020年9月24日 22時) (
レス) id: d344c61285 (このIDを非表示/違反報告)
月見猫(プロフ) - 「約束から。」は「約束したから。」ではないでしょうか？ (2020年9月12日 23時) (レス) id: d7b6c8461a (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱぁん(プロフ) - いつも楽しみにしてます！ちょっと気になったので話させていただきたいのですが、死体は鬼が食べてしまうのでいないのは普通かも……？と思います！失礼しました！これからも楽しみにしてます！ (2020年8月25日 20時) (レス) id: 433180b790 (このIDを非表示/違反報告)
モダエミン(プロフ) - 続編おめでとうございまっす！続編楽しみにしていたので嬉しいですぃ！これからの物語がどうなるのかとても楽しみですぅ！更新頑張ってください！応援していますぅ！ (2020年8月19日 18時) (レス) id: 971db014c2 (このIDを非表示/違反報告)
月見猫(プロフ) - 続編おめでとうございます！これからも頑張ってください！ (2020年8月19日 18時) (レス) id: d7b6c8461a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：二見 | 作成日時：2020年8月19日 17時
