幼児と烏(カラス) ページ41
冬の風が過ぎ去り春の風が心地よくなびく頃。
僕はこの季節には一人で空を飛んでいた筈だ。
それが何故今
「おそらとんでるの?きれー!」
「こら、あんまり暴れちゃ駄目だよ」
迷い子を抱いて、二人で空を翔んでいるのか。
彼女と出会ったのは山の奥だった。枝に座って山一面にあふれる桜を眺めていた。
するとサッサッと花びらを踏む音が聞こえる。野生の動物じゃない気配を感じて振り向くとこの場には似つかわしくない、小さな少女、とも言えない幼児が歩いて来た。
...登山道とは明らかに離れている。
まあ、大方この季節には花見をやる人間が大勢ここにくるからその家族の子供が迷い込んだんだろう。
しかし小さな子供がここをずっとさまよっていたら危うい。まずいと枝から飛び降りた。
子供を狙う妖怪はたくさんいるんだから。
この近辺で離れたなら上空で探せば良い。
「...?....!?」
「やあ、僕は烏天狗、こんな所にいるなんて危ないよ。一人でここまで来たのかな?」
「からすさんー?うん!鬼さんとここまで来たのー!!」
「(鬼..?)じゃあ、早くお母さん達のところへ帰ろうか」
送ってあげるから、どこから来たのか教えてもらえないかな、と。
そして冒頭に至る。
彼女は青色のお化けに手を振られて追いかけたらいつの間にか山の中にいた。と喋った。
成る程、みちび鬼の仕業か。
花見で来たということだから、親はその広場にいるだろう。その近くまで送り届ければ十分だ。
というわけで空を飛んでいたが、この少女、かなり移動していた。
「あー!おやまさんおめかししてる!」
「あははっ、そうだね」
まだ色素の薄い柔らかい髪をさらりと撫でた。彼女の頰は空を飛んでいるという興奮で紅潮していて耳まで赤い。首をキョロキョロ動かすのでその度に首がくすぐったくて首をすくめてしまう。
子供はいつ見ても可愛い。
しかもこの子はそんな容姿で無垢に笑うから特別可愛い。やめて欲しい。
「持って帰りたくなるなあ...」
もう目的地に着いてしまった。近くの木へ着地する。
「からすのおにーちゃん、もうおそらとばないの?」
「ごめんね。残念だけど今日はもうおしまい」
「ううん、ありがとう!やさしいカラスさん!」
「どういたしまして...また来た時にもっと遊んであげるよ。次はもっと早く風を切ってね」
親元に帰す保証は無いけれど。ね。
次の春、その次の春もあの子が来ることは無かった。
あの時、彼女の名前さえ聞かなかった自分を叱責する思いで満開の桜を見下ろした。
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かまぼこうどん(プロフ) - ぽよよ☆さん» ヤンデレふぶき姫かわいい(手遅れ)作者がマック好きなのでたくさん絡ませたいですね(笑)これからもよろしくお願いします...! (2017年1月15日 12時) (レス) id: be0763fab5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽよよ☆(プロフ) - ふぶき姫ちゃんがヤンデレに…!?マッくんとの関係はどうなるのか!そして烏天狗さん神隠しはシャレにならんて!!続き楽しみです…! (2017年1月9日 18時) (レス) id: 1c070c9504 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん - はい!(*゚∀゚*)頑張ります!ありがとうございます〜!! (2016年12月25日 9時) (レス) id: 9b6b569fc3 (このIDを非表示/違反報告)
葡萄マスカット - 夢主ちゃんの飛行機デビュー…!!楽しみです!頑張ってください! (2016年12月25日 0時) (レス) id: 61468344c7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん - 大丈夫っす!気にしないでー(*`∀´*)ノシ (2016年10月5日 21時) (レス) id: 082809ecf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2016年2月3日 22時