幼児と狐 ページ38
ああ、今はミヤコの娘が帰省してきているのか。
襖の隙間から聞こえる話し声に一人思う。だからあんなに慌ただしかった訳だ。
ミヤコ、神田都に数年前孫が生まれた。それも初。
僕はまだ見たことがない。この街で生まれた子ではなかったし、会いに行くときは毎回都から行くからだった。
まあ都の娘は妖怪が見えていないらしいし、きっと孫にもその力は継承されていないだろう。
そう、思っていたのだが。
「...」
「うう、あー」
襖からのぞいている幼児に目を向ける。目が合ってるし、見えてるよな、これ。
先祖返りってやつか。いや、気のせいという場合もあるだろう。
「んー」
ペタペタとおぼつかない足取りでこっちにやって来る。
ていうか親見てろよ...!
親は子供がいなくなった事に気付いていないのか。きっと都も気づいていないな、これ。
「あーちょー、ちょおー」
かよわい悲鳴が聞こえたと横をむけば、空に向かって手を伸ばしている。
(ああ、蝶のことを見ていたのか)
どうやら関心は蝶の方に向かっていたようだ。僕の方は元から視えていなかったというわけで脱力する。
ひらひらと舞う蝶にヨロヨロと追いかける幼女はどこか危なっかしい。このまま歩けば縁側から落ちるぞ。おい。
「ちょーちょさ、まって、」
ボスン。
落ちる、寸前だった。
(危なっかしいおてんばだ)
今現在彼女は僕の尻尾に支えられている。手前で助けてやったのだ。当の本人は訳がわからないのか口を開けて呆然として地面を見ていた。
まあ当たり前だ。僕の姿は視えていないんだから。
「しっぽー、きちゅねさんだあ」
パシパシと自慢の尻尾を叩き(当然力は弱いので痛くはない)笑う彼女に驚かされるのは数秒後のことであった。
「...こりゃ大変なおてんば姫が生まれたもんだ」
大ガマにも言っておこうか。いややめよう。くだらないことをやらかして都にしばかれるだけだあの蛙は。
小さな赤いほおを尻尾で撫でるとくすぐったかったらしい彼女は笑った。都の孫だとはとても考えられない愛嬌だ。
「お嬢さん。君の名前は言える?」
「...うん!あのねー」
「あらA、危ないじゃない」
どうやらやっと気づいたらしい母親がそっとAという少女を抱きあげた。
「きちゅねさんばいあい」
「狐?犬でもいたのかしら...」
「ふわふわー」
「A、か。都の孫としてはいい名前じゃないか」
気まぐれには顔を出してやるか。澄み渡る新しい街の空を見上げた、
聖夜前日の失態、未来に繋がる→←もしも続編第二候補〜平和ワールド天然爆裂〜
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かまぼこうどん(プロフ) - ぽよよ☆さん» ヤンデレふぶき姫かわいい(手遅れ)作者がマック好きなのでたくさん絡ませたいですね(笑)これからもよろしくお願いします...! (2017年1月15日 12時) (レス) id: be0763fab5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽよよ☆(プロフ) - ふぶき姫ちゃんがヤンデレに…!?マッくんとの関係はどうなるのか!そして烏天狗さん神隠しはシャレにならんて!!続き楽しみです…! (2017年1月9日 18時) (レス) id: 1c070c9504 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん - はい!(*゚∀゚*)頑張ります!ありがとうございます〜!! (2016年12月25日 9時) (レス) id: 9b6b569fc3 (このIDを非表示/違反報告)
葡萄マスカット - 夢主ちゃんの飛行機デビュー…!!楽しみです!頑張ってください! (2016年12月25日 0時) (レス) id: 61468344c7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん - 大丈夫っす!気にしないでー(*`∀´*)ノシ (2016年10月5日 21時) (レス) id: 082809ecf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2016年2月3日 22時