むくちめ ページ25
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cn side
「友達に弁当を作ってるんだ」と聞いたときは、耳を疑った。
大袈裟な表現だと思われるかもしれないけど、実際それくらい驚いた。
中学校で出会った涼介は、すでにその頃から顔が出来上がってて、周りからきゃーきゃー言われてたのを覚えてる。
それに対して涼介は良い反応を示したことがなくて、むしろ嫌ってた。
キーキー高い声出してうるせぇ、とかって結構酷いこと言ってた気がするなぁ。
最初はなんだこいつ、って思わなくもなかったけど、案外そういう包み隠さず接してくれるところが僕には凄く心地よくて、どんどん仲良くなっていった。
それこそ、同じ高校に進学するくらいには。
高校に入ると、涼介はより一層女子から人気になったし、友達は減った。
涼介に対して妬み・僻みを持った人たちによる悪意ある噂話や悪口が聞こえてくるようになったのだ。
もとより人付き合いが嫌いな彼は、好都合だ、とでも言いたげであったが、実際は傷ついていたはず。
だって誰かに嫌われることを喜ぶ人間はいないでしょ?
とまぁ、そんなこともあって高校を卒業する頃には、涼介は僕以外とは喋らないようなやつになってしまった。
……今思えば、僕も涼介とくらいしかまともに話してなかったから、人のことをとやかく言える立場にないけど。
気になるのは、涼介がお弁当を作るような相手とはどんな人なのかという点。
“友達”と言っていたけど、性別は? 年齢は? 何繋がりの人?
情報量が少なすぎて全くイメージできないなぁ。
シルエットすら想像つかないけど……
冷たいこと言ってるようで、実は人一倍優しい性格な涼介の魅力に気がつくような人だといいな。
今まで僕以外に心を閉ざしてきた涼介が、人の温かみに触れて幸せを感じられたら……。
うん、そしたら僕はすごく幸せだ。
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作者名:はらぺこ | 作成日時:2023年3月12日 22時