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五 「ッ、クソ」
『惜しかったね。油断した?』
五「オマエなんか、俺が呪力使ったら一撃だってのに」
『あはは、それされたら私絶対勝てないな。体術の時間なので術式等はダメでーす』
五「分かってるっつの」
今学期が始まり早1ヶ月。
今日も高専内の体技場では、風を斬る音、服が摺れる音。
体ひとつで交戦する音が響き渡る。
五条くんへの個別練習として設けられたこの時間。
術式に頼りすぎず、体ひとつでも対抗できるようにと、今だけ呪力使用禁止の縛りを儲けたのだ。
悪態をつきながらも、彼は私を倒す一身に向ってくる。時折見える隙を突けば、彼の体制が崩れてしまう。
でも、直ぐに対策して向かってくるのは彼の実力。
もう数ヶ月もすれば格段に実力が上がるだろう。私が彼の体術の相手をやりきれないほどになる。
近いうちに、彼の体術の指導者が夜蛾先生に交代となる時期が来るな。
五「こんな時でもヘラヘラ笑ってやがるし、ほんとムカつく顔」
『失礼な。綺麗な笑顔ってお世辞くらい言ってよ』
五「誰がそんな事言うかよ。嘘でも嫌だわ。呪われ家系の末裔が」
『酷いねぇ。 首とった』
長期の組手の末、正直やっとの思いで相手の隙に入り込無ことができた。
相手の首を手で突けば、どんっと言う音と共に彼は足の力を抜いて尻もちを着いた。
五「オマエさ、雑魚の癖になんで強いの」
『すごく矛盾な文章だね』
相手の言葉に少し笑いながら返す。
後から、私は強くは無いけど と付け足した。
体技場を後にする時、突然彼はそう聞いてきた。自販機で五条くんに飲み物を奢ってやり渡せば、彼は素直に受けとり、話を続ける。
五「なんで4級なのかって」
『五条くんは気づいてると思ってたけど』
五「何となく分かってる。全部見えてるし。オマエから聞きたかっただけ」
六眼もちの彼にはお見通しなのだろうに。
でも言葉にして聞きたがるから、意地が悪い。別に隠すことでもないし、知識の一環として教えることにした。
伸ばした左側の前髪を、手で避けて見せる。
左側の視界が開ける。
私を見据える 彼の綺麗な六眼が浮び上がった。
鮮明に写り始めた私の世界の中、目の前の相手を見据えれば彼はすこし目を開いて反応を見せた。
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作者名:あまね | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/easye1/
作成日時:2023年9月9日 21時