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五「まだ居たわけ」
次第に窓の外が暗くなり すっかり夜になった頃。
熱を出して眠っていた五条くんは目を覚まし、開口一番に私にそう言い放った。
昼間のような態度はなく、いつもの様子の彼に 本調子なのだと安心した。
『言ったでしょ起きるまでいるって』
五「真面目かよ」
『そうです 先生真面目なの。熱は下がった?』
そう問いながら、彼の額に手を伸ばす。でも、その手は五条くんに振り払われてしまった。
五「下がった。完璧に下がったから。すげー元気」
『触んないとわかんないでしょ?』
五「俺がいいって言ってんだからいいんだよ」
頑なに触られることを拒否してくる。
私もムキになって手を伸ばし、何とか押し勝って彼の額に手が当たった。
『さっきよりは下がってる。なら大丈夫だね』
五「だから言っただろ」
そう言いながら、彼は額に当てていた私のハンカチを押し付けるように返してきた。
『でも、無理はしないように。ゆっくり休んで』
五「へーへー、わかった」
五条くんは適当に返事をして顔を背けた。
『じゃ、お大事にね』
私はこれから任務の消化をするため、もう彼の部屋を後にすることにした。
昼間行く予定だったものを遅らせ、どうしても優先順位の高いものは、別の術師と任務を代わってもらったりしてその場を免れていた。
残ったものを今から一気に片づける。
気を使ってくれた術師も居て、私の行くべき場所が比較的近場には固められたのは幸いだった。
車の運転を担当された補佐官にはもう断ってしまったし、夜中に呼び出す酷な事もする気は無い。
バイクで行こうかな、なんて自分のポケットに入っているキーを片手で取りだす。
彼の部屋を後にしようと、出口のドアを開け。
部屋を出てドアを閉める直前、
五「助かった。サンキュ」
なんて言葉がすぐ後ろから聞こえてきた。
驚いて振り返れば、いつの間にか、扉の前まで寄っていた五条くんがいて。直ぐに
バタン
とドアが閉められた。
その後にガチャン と鍵をかける音も。
彼の照れ隠しかな。クスッと笑ってしまった。
さっき彼が言ってくれた言葉を心の中で思い出す。
素直な感謝につい嬉しくなって表情がいっそう緩みそうになるも、我に返って引き締める。
任務に行かないと。憂鬱なことを思い出し暗い気持ちになるけど、腹を括らねば。
職員室に寄り必要書類をカバンに詰めて。夜道にバイクを走らせ、私は呪霊祓いへ向かったのだった。
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作者名:あまね | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/easye1/
作成日時:2023年9月9日 21時