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あれは、まだ夏服を着ていた頃だった。朝、教室には奇妙な空気が漂っていた。不審に思いながら中に入ると、澪奈とさくらが呆然と立っていて、周りはそんな二人を笑いながら見ていた。
「……どうしたの？」
二人に近づいて、初めに目に入ったものに、私は目を見開いた。そこには、酷い落書きがされた机。"ドーピング野郎"の言葉がやけに目につく。
「誰、こんなことしたの」
「まさかドーピングしてたなんてね」
「そりゃあ全国大会も勝てるよなぁ」
思考が停止したみたいに、動かない。周りの声が雑音に聞こえた。
「何の話…？」
「ネットで拡散されてる。この前の大会で澪奈がドーピングしたって」
なにそれ、そんなバカな話を、皆信じたの？
「私はやってない！」
「っ澪奈！」
澪奈は一人教室を飛び出していった。そんな澪奈を追い掛けようとしたとき、A、と唯月が私の名前を呼んだ。
「あんた、あいつの味方するわけ？」
「澪奈がドーピングなんてするわけないでしょ、バカバカしい」
そう言い捨てて、澪奈を追い掛けた。けど、もう澪奈の姿はどこにも見えなくて。靴箱に靴が入っていなかったから、もう学校を出たんだと思って、私はあちこち探し回った。
「澪奈！やっと見つけた…っ！」
とある公園。ここは私にとって大切な場所。もしかしたらここにいるかもと思って来てみたら、正解だった。澪奈はベンチに腰掛けて、息を切らす私を見上げた。
「A…」
「はぁ…、すごく、探し回ったんだよ…学校の周りとか…家にも行ったし、商店街も、なんならあの交差点のコンビニの、ずっと向こうにあるコンビニまで行った！」
「…っふ、ふふ、」
「なんで笑ってるの、」
「Aが必死だから、ちょっと面白くて…」
そう言う澪奈だけど、無理して笑ってるんだなってすぐ分かった。そりゃ、当たり前だけど。あんなこと、されたら。
「私、学校飛び出した後、家に帰ろうと思ったんだけど、こんな時間に帰ったらお母さんに怒られると思って、ここ来たんだ」
「え…、ごめん…私が家行っちゃったから、おばさんに何か聞かれるかも」
「ふふ、いいよ。──ありがと、A」
その時の、少しだけ泣きそうな顔で笑う澪奈を見て、絶対澪奈の傍にいるって、守らなきゃって、そう誓ったの。
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ここここ - 私もサ読み君が大好きなので、読んでいて思わず笑みがこぼれそうです (2019年2月11日 20時) (
レス) id: a0edfdd1ef (このIDを非表示/違反報告)
ほたる(プロフ) - 胎児????さん» コメントありがとうございます^^そんな風に言って頂ける程の文ではありませんが、大変嬉しいです…！最近客観的に自分の作品を見るということが難しかったので、他の方にそう言って頂けるのはとても励みになります！これからの展開もぜひ見守って頂けたらなと思います。 (2019年2月9日 17時) (レス) id: d2c549795f (このIDを非表示/違反報告)
胎児????(プロフ) - コメント失礼します。本当はコメントは控えよう！と思って見ていたのですがあまりの素晴らしさにコメントを書かずにはいられませんでした。お話の進め方や書き方がとてもお上手で読みやすいです。これから里見くんとの関係がどう変化していくのかとても楽しみです。 (2019年2月8日 19時) (レス) id: 8684af6c84 (このIDを非表示/違反報告)
ほたる(プロフ) - ソラさん» コメントありがとうございます^^次のお話でもっと里見くんとの関係を掘り下げていく予定なので、お楽しみ頂けたら幸いです…！ (2019年2月8日 19時) (レス) id: d2c549795f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 里見くんとの和解というか、優しい展開になっていくのをゆっくり見守りたいです。かっこいい。 (2019年2月8日 5時) (レス) id: 06b27bfe9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほたる | 作成日時：2019年1月27日 22時
