【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ45)

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ーーあの日から一日空いた。あれから彼女とは連絡を取っていない。でも、ビニール傘を返そうと勇気を出して今日は行こうと思っているのだ。仕事に空きがあって良かった。

　そう思いながら彼女が住む下町への道を進もうとする。

　だが、やっぱり、足が進まない。彼女はなんと思っているのだろう。おそってこようとした怖い人、だろうか。申し訳なくて、顔を合わせにくかった。しかし、人に借りたビニール傘は返さないといけないだろう。彼女の傘だ、雨のときにないと彼女が困る。

　一昨日の記憶をたどりながらアパートについた。下町の古き良き雰囲気はどことなく落ち着く。彼女のコンクリートでできたアパートも、新しすぎず、古すぎず、と、この街の雰囲気に溶け込んでいた。

二階建てのアパート。その横についた階段をのぼって、二階。端っこの部屋だ。
深呼吸をして、階段から空を見上げる。一昨日の雨が嘘のように晴れた空は、暑さを増させる。いつもなら張り切って遊んでいただろうな。

意を決してインターホンを押した。一回、二回。

「三月、です」

三回、四回。返事はない。

「あの」

……このインターホンは壊れているのだろうか、錆びているし、音がしない。それとも家の主がいないだけだろうか。まぁ、声をかけても返事がないということはいないんだろうな、という結論に行き着く。

　そうわかった瞬間、安心したのか緊張が抜けたのか、腰が抜けそうで、ドアノブにつかまる。はぁぁ、と息を出し切ってふらりとよろめく。

……と、ガチャりとドアが開いた。

「へっ」