【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ41)

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午前七時。歩道橋の上で通勤ラッシュの車たちを眺める。立ち止まった私に後ろのサラリーマンが邪魔だ、というように舌打ちをした。その音にびっくりして避ける。そんなに怒らなくてもいいじゃないか、という不満を心の中で漏らしながら、リュックを背負い直して学校への道を歩いた。

　しかし、学校への足取りは遅い。なぜなら学校に行くのは億劫だからだ。課題を出していないから、先生に怒られる。それは本当に嫌だった。いや、私がちゃんと課題を出せばいいのだけれど。

　空にのしかかったどんよりとした雲を見上げ、ため息をついた。昨夜の雨に濡れた、歩道橋の階段をゆっくり降りる。

ーーーー。

「いつになったら出すんだ？」

　耳にタコができるほどに聞いた叱責だ。その大きい声にビクリと肩が揺れる。周りの生徒のクスクスという声が恥ずかしさを増させた。

「……ごめんなさい、でも、もうちょっとで」

　私は慌ててスケッチブックを出した。ページを開いて見せる。大体はできたものの、仕上げがまだだった。まだ納得のいっていない絵だ。三月があの日に来なければ、完成させていただろう。

「おお、良いじゃないか」

　先生は私のスケッチブックを手に取り、怖い顔から笑顔になる。まだだという私の言葉は聞こえていないようだった。絵については褒めてもらったが、この絵で褒められるのはなんだか気分のいいものではない。鉄のサビ、歳を重ねたお店構え。まだ老舗の店の雰囲気を出せていない。

「次こんなことがあったら単位は取れないからな」

　その上、釘を刺された。こんなときに自分の意見を言えないのは短所だ。高校の進路のときも、自分の意見が言えなかった。いらないことだけ言って、肝心なところだけ言えない。苦しくて、寂しい。

　涙が出ないようにギュッと拳を握りしめた。