【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ39)

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ーー苛立ちと話の雰囲気で、頭がどうにかなっていた。抵抗しないからとか、オレが彼女に好意を持っていることが本人に知られているからとか、言い訳はある。
　この先の展開に恐怖心を持った彼女の目が、余計に気持ちを狂わせた。オレは悪くない、なんて思ってしまう。最低だ。

　でも考えはそこでとどまって、踏み出せなかった。いや、これは踏み出してはいけない。白くて柔い彼女の腕を掴んだまま、長考に入った。

　冷静になる。……ここで無理矢理そういうことをしたとして、どうなるんだろう。彼女は怖がっている。お互いの愛のないまま終わってしまうのだろうか。そこまでして関係を絶ちたくない。嫌われたくない。

……やめなきゃ。

　そうは言っても雨の音が邪魔くさくて苛立ちが増した。彼女の腕を離す。見ると、オレの力のせいでその白くて柔らかい肌が赤くなっていた。無意識に痛めつけてしまった自分に嫌気がさす。

　でも、オレはこれ以上に彼女の心を痛めつけようとしていた。一瞬でも、そういうことを考えた。最低だと思った。

「……ごめん」

彼女と目を合わせるのが怖くなって立ち上がり、帰ろうと玄関へ向かう。ため息をついた。オレは逃げるのだろうか。情けない。
かがんで靴を履くと、後ろからトトト、と小走りでこちらへやってくる音が聞こえた。罵声でも浴びせに来たのだろうか。謝ることしかできないのに。

そう思って目を伏せた。なんでも受け止めるつもりだった。

「あの、傘持っていって」

　ドアノブに手をかけた瞬間、優しい声が耳に届く。
　それは予期せぬような言葉で、ドアノブの静電気さえも驚けなかった。すぐに振り向く。

「……ほら、雨降ってるでしょ」

　目の前で微笑む彼女への驚きを隠せない。何故オレに優しくできる？何故笑える？
ビニール傘を持った彼女はオレにその傘を押しつける。思わず条件反射で受け取ってしまった。お礼も言わないうちに、彼女は手を振ってそのまま部屋の中へと消えていってしまった。

……部屋の中に消える前の一瞬の表情は、笑顔ではなく、寂しそうな表情をしていたのをオレは見逃さなかった。