【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ35)

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「あー、あとさぁ」

　彼女は笑いながら、オレに勘付かれないように次の会話を考えている。上手く理由をはぐらかされているようだと感じた。オレがAのことを好きだった、ということが何に理由になるのだろう。

「……あの、まだ返答の意味分かってないんだけど」

　小さく、苛立ちを覚えながらもきわめて優しいトーンで言った。しかしどうもオレは感情の起伏が激しいようで、その小さな苛立ちも表情に見えているのだろう。彼女の顔が強張った。

　彼女は今のオレには冗談が通じない、と思ったのか神妙な顔で目を合わせてくる。そして深くため息をつき、自分の腕を一回だけさすり、腕を軽く組む。それは自己防衛のための心理的動作であり、本気で緊張しているのだとわかった。

「今、ここでは話せない」

三月には言いたくない、と付け加えて彼女は押し黙る。

「なんで」

　ここで理由を聞くのは大人として野暮というものだろうか。そう思って途中で言い留めた。でもオレに言いにくいことだということは、理由の大体はオレのせいという感じなのだろう。オレが何をしたっていうんだろうか。

　二人で黙って食べるケーキは味がしなくて、溢して量が少なくなった紅茶はぬるくなっていた。全然楽しくないし、この場にいたくもないとさえ思った。

　すると、彼女が沈黙を静かに打ち破る。

「……家、来る？」