【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ28)

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鉛筆の芯が丸まった頃、私の身体は悲鳴を上げていた。

「……暑い」

　そう、暑いのだ。暑い。暑すぎる。この今日、真夏日を超えた、猛暑日というものが街に訪れやがったようだ。この気温の中、外で絵を書くなんて自決しようとしているのと同じだ。

　夏という季節を忌まわしく思いながら、手を動かした。目の前のモデルをじっと見つめる。今は商店街の中にある八百屋の景色を描いていた。なので、かろうじて建物の日陰で日光はしのげている。
　が、この猛暑。すぐそこの日光が当たっている地面には、陽炎がゆらめいていたり、働く八百屋のご主人がむさ苦しく汗をかいている。それを見るだけで私も暑苦しく思えた。首元の汗を拭う。

「大丈夫かい」

八百屋のご主人に話しかけられた。私は苦笑してうなずく。

　学校帰りにキャンバスを持って課題用の景色を探していたところ、このご主人が声をかけてくれたのだ。
　しかしただのご厚意ではなく、絵を描く客寄せパンダのような、そういう感じで利用されているとなんとなく感じた。私が絵を描いているのを覗く商店街のお客をご主人が上手くかっさらっていく。まあ世の中、上手く使えるもんは使わないとね。

「そういや今この商店街にテレビ来てんだってよ」

まいどー、とお客に一言かけ、ふとしたように私に言う。

「なんでも、アイドルのイケメン達だと」

そんなに興味はなかったのでご主人の声に適当に相槌を打つ。それよりも鉛筆を削って先を鋭利にしすぎたことを悔やんでいた。これじゃあ書きにくいじゃないか。
まあ、水彩絵の具を塗ってから柱のパースの不備に気づいて線を描くので色は薄いほうがいいけれど。

「あー……お手洗いいってきますね」

とりあえず席を立った。