【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ23)

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ーー「そういやA、課題早く出せよー」

　そんな催促が私に向けて発せられる。それは何回も、耳にタコができるほど聞いた台詞だった。私は専門学校に入っても、教師たちからは問題児だと噂になっている。課題はギリギリに出すし、話は聞いてないし。

　あの頃から三年経った今も、私は何も変わっていない。

「何も、クロッキー中に言うことじゃないんじゃ」

　シャッシャッ、と鉛筆の音を立てながら、生徒たちがモデルに目を向けてタイムアタック競争をしている。クロッキーとはモデルを素早く描いて画力を鍛える、という訓練だ。これをすることで動きのあるものやモデルの形をすぐにを捉えられる。枚数をどんどん描けばどんどん画力がアップしていくらしい。

　実感はあまり沸かないけれど、入学した当初よりはマシになった気がする。
……いや、前言撤回。三年も学校に通っておいて上手くなってなきゃ可笑しい。マシになった気がする、をマシになった、と訂正しておこう。

「いや、今言わないとお前すぐ忘れるだろ」

教師が呆れながら言う。

「課題やるのが面倒臭いだけでちゃんと覚えてますよ！」

鳥じゃないんだから、と付け加えると周りの生徒がクスクスと笑った。笑いが取れて良かった。
　先程から話題に上がっている課題とは、水彩画で、街の風景を描くという課題だった。水彩絵の具出すの面倒くさいし、外でやるのも面倒臭い。誰かに見られるなんて少し恥ずかしいからだ。別にすごく下手なわけでもない。自信がなくて気が進まないだけだった。

はぁ、とため息をついた。