【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ22)

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ーーそれから逃げるように引っ越しをした。彼には挨拶もろくにせず、引越し先も教えなかった。ただ、親はお人好しなので「何処なの？」と三月が言うならば快く教えるだろう。時間の問題だろうか。

　とりあえず、ダンボールだらけの部屋を見回す。引越し先のアパートは、学校には近いが、安くて古い、そして狭いというあまり満足とは言えない物件だ。まぁ、学生には身の丈に見合った物件ではあるだろう。

　まだ寒いが、少しあたたかくなった季節の窓辺へ歩み寄り、深く息を吸って吐いた。まだ見慣れない景色が私の目に映る。専門学校は都会の中心部にあり、私のアパートもそこにあった。高いビル達や電波塔などが見える中の下町。錆びた土台、古びたコンクリートがその景色に溶け込んだアパートだ。

「あーもーなんか……マリッジブルー？」

　ひとりでに呟く。あれ、なんだっけ。実家に帰りたいという一人暮らし特有の感情。というかマリッジブルーだて何だっけ。もう、長ったらしいカタカナは難しいな。
(後で調べたらホームシックと言うらしい。ちなみにマリッジブルーは結婚を控えた女性特有の感情だ)

　そんなくだらないことを考えるのはいつもの癖だ。違うことを考えようと、ベッドに寝転び考え事をする。それは長考とも少考ともわからないような、ただボーッとした時間だった。

　なんとなく、橙色が頭に浮かぶ。橙色のマッシュルームみたいな髪、大きくて丸い橙色の瞳、私と同じくらいの背丈。明るくて可愛らしい声。

『その時まで待ってて』

「……どうにかなっちゃいそうだから早くしてね」

ぽつりと呟いた。