【和/泉/三/月】3日後の行方【ア/イ/ナ/ナ】 (ページ16)

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ーー幼馴染みだから

そうやって彼に依存して、ずっと学校生活を送ってきた。でも、今日で最後みたいだ。それぞれの大人への道を進んでいく、なんて臭い歌詞みたいな言葉だけれど、本当のことに相違ない。

「卒業式を始めます」

　その一言で、終わりの一日が始まった。まだ冬の寒さが残る春。卒業式のために飾られた体育館は、少し、肌寒く感じた。校長が言う、祝辞の挨拶の『寒さもようやくゆるんでまいりましたが』も、全く共感ができない。人の密度が狭いのが唯一の救いである。

　つまらない祝辞に小さくあくびを漏らすと、隣の女子に咎められた。咎めるのであれば、どうやったらあくびが出なくなるのかついでに教えてほしい。どうやって、知らない教育委員会の人の祝辞を愉しめばいいのだろうか。

二時間ほど、つまらない卒業式を耐え抜けば、自由な時間となる。教室で黒板にメッセージを書くのもよし、好きな人に告白するのもまた卒業式の恒例だと言えよう。

……告白ね。

少し息が詰まりそうになったが、とりあえず教室から外を眺めた。一年間世話になった机と椅子に感謝を込める。ついでに机にあった落書きも消してあげた。

「おい、帰るぞ」

そうして机に対して愛おしくうつ伏せになって感謝を伝えていたところ、
急に私への人間の声が聞こえて我に返る。
ぽん、と卒業証書で頭叩かれ、私はその声の主を見やった。

「なんで？まだ人いるじゃん」

もうちょっと居ようよ、と言いかけたところ、クラスの男女二人組がこちらを見ていることに気がつく。気まずそうな視線だ。
なるほど、恒例行事の告白か。二人きりになりたいのね。そういうことなら教室じゃなくてもいいのでは、という不満を心で呟きながら渋々教室を出る。

「好きです」
私達が教室の外に出ると、先程の女の子のそんな声が聞こえた。無事両思いだったのか幸せそうな声がこちらにも聞こえてくる。

なんだろう、私の方は気まずい雰囲気になってしまった。