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一睡も出来なかった。あの状況で寝れる方がすごいと思う。尊敬するレベルだ。駅から会社に向かう途中、スマホのカメラをインカメにして自分の顔を見れば、目の下にはクマが。
…うっ、醜いほどのクマだ………。大きなため息をつきながら、前髪もついでに直していたら、突然私の後ろに映った男に驚いて、ヒュッと息を飲んで思わず手が滑ってシャッターを押してしまった。
「え、なに?隠し撮り?」
『違いますよ!!!急に後ろに立つのやめてください!』
「おはよ。」
『……おはよう…ございます……』
昨日の今日で顔を合わせづらい。なんでこの人平気な顔してるんだろう。自然と私の隣に立った茅ヶ崎さんは眠たそうにあくびをしている。
………昨日のことについて何も言ってこないし、もしかしたら人格二つあるとか?
「昨日、ちゃんと帰れた?」
『ーーーっ』
「ん?」
『か、帰れましたよ。おかげさまでっ』
「ならいいんだけど。」
『へっ』
ぽんぽんと頭を撫でられ、思わず足を止める。そんな私に御構い無しに茅ヶ崎さんは歩いて行ってしまって、残された私は撫でられた頭を自分の手で触った。
______なに、いまの。
「茅ヶ崎さん、おはようございま〜す!」
「おはよう。」
「…はぁ…今日もかっこいい…!」
「いつ見ても爽やかだよね!」
『…………』
胡散臭。相変わらずの爽やかスマイルは、一睡も出来なかった私にはかなり眩しい。目をぱしぱしと数回瞬きをして、自分のデスクへと向かった。…そうか。茅ヶ崎さんのデスク隣なんだった。(今更)
「……弓原、ちょっといい?」
『はい?』
椅子に座って早々、上司に呼ばれて重たい腰をあげる。なんだろうと思いつつ、連れていかれたのは人がいない給湯室。え、本当になんだろう。
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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時