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自分でもアホな質問だなと思った。キョトン顔の先輩が、たちまち吹き出す。
なんで笑うんですか!?とまるで威嚇した犬のように先輩に猛抗議すれば、ケラケラと笑ってから「腹痛い」とゆっくりと自分お腹をさすった。
「まぁ嫌いではないかな。」
『…は?』
「寝顔が可愛くて、つい。」
『!?!?!?』
「ふは、顔真っ赤。」
すり、と頬を撫でられる。綺麗な瞳がとろりと溶けて、熱っぽい視線に変わった。頬を撫でていた指が唇に移動して、自然と顔が近づいてきて______
「!」
『させませんから!』
「ケチ。」
手で口元をガードをすれば、手のひらをべろりと舐められた。ひぃ!と声を上げてベッドの上にひっくり返ってしまう。そんな私を見て先輩は、今度はお腹を抱えてケラケラと笑い出した。
『からかってるんですか!?』
「本気って言ったらどうする?」
『信じるわけないでしょ!?……帰ります。』
「泊まっていかないの?」
『泊まりません!』
「終電ないよ。」
『タクシー捕まえますから!』
「じゃあ、タクシー代。」
『いりません!』
ベッドの下に落ちていたスーツのスカートを履いて、ボタンをしっかりと上まで止める。鞄を雑に持って、部屋を出ようとしたら、腕を掴まれた。
「今日のこと、俺たちだけのヒミツね。」
『…っ、言えるわけ…!』
「んじゃ、また明日。」
天使のような笑顔をした先輩は、私にとっては間違いなく悪魔だった。掴まれた腕を振りほどいて、勢いよく部屋を出る。
部屋を出た瞬間、腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。
『〜〜〜〜っ……何なの、あの人……!』
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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時