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(貴女side)
「ねぇ、お願いだよ、A!」
『いや、だから…私はそういうの苦手なんだってば!』
「Aにしか頼めないの、お願い!」
『そうは言ってもさぁ…』
高校時代の同級生からの久々の連絡。何かと思って電話に出れば、何ともくだらない頼み事だった。
「A、彼氏いないんでしょ?チャンスだよ?」
『今はそういう考える時間ないんだって。仕事忙しいし…』
「息抜き程度でいいからさ?一生のお願い!」
あんたの一生のお願いいくつあるんだよ。と心の中でツッコミながらも、口からこぼれるのはため息しかなかった。
友人によれば、今日の夜に行うはずの合コンに参加する女の子が一人来れなくなったんだとか。何で私なの?と聞いてみたら、他の友達は彼氏がいるから、だとか。やかましいわ。
「弓原、いつまで電話してんの。」
『す、すみません……。とにかく、私は行かないから!仕事中だから切るよ!』
「ちょっと、A!」
ブチッと通話を切って、ため息。茅ヶ崎さんの鬼のような声が聞こえてきて思わず電話を切っちゃったけど、ちょっと可哀想だったかな。……いやいや、流されちゃダメダメ。合コンなんて絶対に行くもんか。
「随分と深刻そうだったけど、何かあったの?」
『あ…いえ。プライベートのことなんで…全然。』
「あっそう。」
『(興味ないなら聞くなよ)』
「茅ヶ崎さん、これ台湾のお土産です。」
「ありがとう。」
相変わらず語尾にハートがつくような甘ったるい声が聞こえてきて、出た出た。と心の中で捻くれる。
茅ヶ崎さんはモテモテで恋人なんて選び放題なんだろうな。私なんて彼氏いたの高校時代だけだったのに。
「弓原さんも、どうぞ。」
『あ、ありがとうございます。』
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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時