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(至side)
最悪だ。昨日、推しイベがあったせいで、寝たのは朝の4時。そりゃ顔色も悪いしクマも酷いわけだ。そのおかげで、後輩にも心配される始末。ゲームしてましたって言ったらどんな反応されるんだろう。
「あ〜〜〜〜〜…」
「茅ヶ崎さん、この書類について相談なんですけど……大丈夫ですか?」
「…うん、大丈夫だよ。」
にっこりと無理やり笑顔を作って見せれば、女性社員の顔たちまち緩んでいく。それにしても、毎日俺の顔を見ているはずなのによく飽きないな。
あ、別に嫌味なわけじゃなくて、素朴な疑問っつーか。毎朝、笑顔で挨拶をするたびにときめかれたら流石に反応に困るというか。
「じゃあ、これで一度やり直してみます!」
「うん、よろしく。」
「ありがとうございましたっ」
嬉しそうに自分のデスクへ戻っていった彼女を見送りつつ、一度手を止めて背もたれに寄りかかる。流石に2時間睡眠はキツい。
あくびを噛み締めながら隣を見ると、弓原はいなくて。PCを除けば仕事はやりかけ。どこに行ったんだあいつ。
「桜井さん、弓原知りませんか?」
「弓原?…あー、給湯室じゃない?」
「ありがとうございます。」
俺を差し置いてサボりか。俺も一息つこうと、給湯室に向かうと、そこには呑気にコーヒーを飲んでいる弓原の姿があった。
『あれ、先輩どうしたんですか。』
「…コーヒー飲みにきた。」
『淹れましょうか?』
「…んー…」
弓原の顔を見ると何故かいろいろと緩んでしまう。気を張らなくていい相手だと思うとつい。「茅ヶ崎さん?」と不思議そうに首を傾げた弓原にゆっくりと近づいて、俺よりも幾分小さな体に抱きつくように寄りかかる。
『ふぎゃっ』
「(あー…柔らかいし、いい匂いする………)」
『ちょ、先輩!?』
「(極上の抱き枕……)」
『ちょっと、ちょっとちょっと先輩!寝るなら仮眠室にっ……!!』
「……むり。」
『は、ちょ………先輩!』
弓原の抗議の声を聞きながら、重たい瞼を閉じる。もう…駄目だ。そう思った時にはもう遅くて、体の力が抜けて意識が遠のいていった。
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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時