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『ふぁ…………』



自分の家で目覚める朝はいいものだ。うん、まあ、それが当たり前なんだけど。もう一度あくびをして、時計を見ればお昼前。


昨日はなんだか騒がしいところにいたから、一人暮らしの家は静かすぎる。なんだかんだで楽しかったなぁ。ああいう賑やかなところで過ごすのは久しぶりだった。


実家が恋しいわけではないけど、ああいうのもたまにはいいかも。



『(冷蔵庫にはなにもなしっと。)』



昨日、茅ヶ崎さんのとこの寮で食べた朝ごはん美味しかったなぁ。冷蔵庫に何も入っていないこの状況に呆れつつ、昨日食べたご飯を思い浮かべる。ふわふわなオムレツと、デザートのパンケーキ。あんな豪華な朝食初めてだ。


仕方なし。ちょうどお昼にもなるし、外へ出よう。そう意気込んで、外に出られる格好に準備を始めた。





「あれっ、弓原ちゃん?」


『…うげ………』


「奇遇だね!」


『で、ですね……井原さん。』



勢いで、うげって言ってしまった………。この様子だと聞こえてなさそう。


随分と機嫌よく声をかけてきたのは、井原さん。茅ヶ崎さんと同期で、何かと構ってくる同じ部署の先輩だ。


何度も言うが、私は井原さんのような人が苦手だ。仕事なら割り切れるけど、プライベートで会うと結構キツい。



「天鵞絨町にはよく来るの?」


『あ、いえ……今日はたまたまです。』


「へぇ、買い物?」


『まぁ、そんな感じです。』


「そっかー。何買いにきたの?」


『…えっ、と〜……日用品とかですかね…』



そんなに私の買い物が気になるか?何故か、私の隣を歩く井原さん。あ〜、面倒な人に捕まってしまった。どうしよう。どうすれば逃げられる?耳元で聞こえる井原さんの声なんかに耳も貸さず、私は井原さんから逃げ出す術を考えていた。






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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時

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