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いや、あんたのせいだわ。なんて言えるわけがなく、本格的に逃げ口がなくなってしまった。こんなんだったら外に出なきゃよかったよーーーー!
そう、諦め掛けていたところに、「お待たせ。」と聞こえてきた声。振り返れば、そこにいたのはあの日、先輩の部屋にいたヤンキーくんだった。
「悪りぃ。迷った。つか、着いてるなら連絡しろって。」
『?』
「…ん?姉ちゃんの知り合い?」
『(姉ちゃん!?)』
「あ……弟さん?…えっと、会社の同僚の井原です。」
「あ、そうなんすね。」
「妹がいつもお世話になってます。」
『(妹!?)』
すっと反対側から割り込んできたのは、劇団にいた優しそうな人だった。…名前は、忘れちゃったけど、二人とも茅ヶ崎先輩と同じ劇団の人だってことはわかる。……もしかして、助けてくれた?
『…てことで、すみません。井原さん。これから用事があるので…』
「あ、そ、そう…。じゃあ、また会社で。」
『はい。』
案外すんなりと追い払えたな。そう思いながら、井原さんの姿をぼーっと目で追う。それから、ハッと我に返って慌てて二人にお礼を言った。
『ありがとうございました!めちゃくちゃ助かりました!』
「やっぱり困ってたんですね。」
『…あ、わかりました?』
「いや、万里くんが……困ってるっぽいからって。」
「まー、顔見知りだし気づいてないフリするのもカワイソーだと思って。勝手に弟になってすんません。」
『ぜ、全然!むしろすっごく助かった、ありがとう。』
ホッとして気が抜けたのか、ぎゅるるる…と私のお腹から大きな音が。そういえばお昼食べてないんだった………。そう、お腹をさすっていたら、二人がたちまち吹き出す。
『え?』
「でっけぇ音。」
「俺たちこれからカフェに行くんですけど、よかったらどうですか?」
『えっ、でも悪いですよ…』
「まぁ、ここで会ったのも何かの縁っつーことで!」
「そうだね。」
『じゃあ……お言葉に甘えて……』
こんな休日も悪くないか。そう思いながら、二人の背中を追いかけた。
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作者名:しあ | 作成日時:2019年6月27日 22時